2025年第2四半期は、わずか3カ月ながらも1年にも感じられるほど、株式市場が大きく揺れ動く期間となりました。4月2日に発表された報復関税が発端となり、ドナルド・トランプ大統領の政策転換も重なって、世界中の市場が影響を受けました。米国株も例外ではなく、貿易摩擦の波が株価を大きく左右しました。
その中でも、大きく上昇した銘柄とそうでない銘柄の差が鮮明となりました。
コインベースが四半期トップの上昇率を記録
2025年第2四半期におけるS&P500の中で、最も大きな上昇を見せたのは暗号資産取引プラットフォームを展開するコインベース・グローバル(COIN)でした。株価は四半期で106%以上の上昇を記録しました。
5月初旬にビットコインが10万ドルを突破したことが追い風となり、さらにトランプ政権下での規制緩和も株価を押し上げる要因となりました。6月には数千人規模のユーザーデータ漏えいが発生しましたが、市場はこのネガティブ材料を無視するかのように、株価は上昇を続けました。
エネルギー株が大躍進、NRGエナジーは72%の上昇
電力供給を行うNRGエナジー(NRG)は四半期で72%の上昇を記録しました。特に5月だけで41%の上昇を見せ、月間でもトップのパフォーマンスを記録しました。
同社は18カ所の天然ガス発電所を買収し、発電能力を2倍に拡大。その直後に発表された四半期決算では、売上・利益ともに市場予想を上回り、投資家の期待を一気に高めました。
原子力関連株も上昇、GEベルノバとビストラが続伸
原子力を中心とするクリーンエネルギー企業も好調でした。GEベルノバ(GEV)は71%、ビストラ(VST)は64%の上昇を記録しました。
GEベルノバは原子炉を含む広範なエネルギーソリューションを提供し、ビストラは原子力発電に強みを持っています。共和、民主の垣根を超えた超党派による原子力支援の動きと、AIによる電力需要増を背景に、原子力は次世代の主力エネルギーとしての期待を集めています。6月には大統領令も発令され、国内での原子力生産を後押しする動きが加速しています。ただし、現在審議中の大規模歳出法案によって税制優遇の一部が打ち切られる可能性があり、今後の見通しには注意が必要です。
シーゲイト・テクノロジーは67%上昇
ストレージデバイスメーカーであるシーゲイト・テクノロジー(STX)は、予想を上回る四半期決算が好感され、67%の上昇となりました。
加えて、関税の影響についても、アナリストは「顧客需要にはほとんど影響しない」と指摘しており、貿易摩擦の中でも力強い動きを見せました。
ユナイテッドヘルスは四半期ワーストの下落率
一方、最も大きく下落したのはユナイテッドヘルス・グループ(UNH)でした。株価は40%以上も下落し、四半期のワーストパフォーマンスを記録しました。
4月に業績見通しを大幅に引き下げたことで売りが加速。5月にはガイダンス自体の撤回に追い込まれ、医療費の想定以上の増加が原因とされました。同月、アンドリュー・ウィッティ前CEOが「個人的な理由」により辞任したことも不安材料となりました。
エンフェーズ・エナジーは37%下落
太陽光発電関連企業のエンフェーズ・エナジー(ENPH)は、4月の決算で売上・利益ともに市場予想を下回り、37%の下落となりました。
さらに、今後の関税が利益率に与える影響を警戒した投資家の売りが続きました。議会では住宅用ソーラーに対する税制優遇の見直しも議論されており、同社とその業界全体の先行きは不透明感が強まっています。
その他の下落銘柄:フォーティブ、ベクトン・ディッキンソン、ダウ
このほか、計測機器大手のフォーティブ(FTV)が30%、医療機器メーカーのベクトン・ディッキンソン(BDX)が25%、化学メーカーのダウ(DOW)が24%の下落を記録しました。いずれも業績見通しや貿易政策の影響が重しとなった格好です。
パランティアは2025年の年間トップ銘柄に
年間を通じたパフォーマンスで最も注目されるのは、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)です。AIを活用したソフトウェア企業として、機関投資家からの根強い支持を集めています。
同社の売上は米政府との契約に大きく依存しており、6月末にはアクセンチュア(ACN)との協業により連邦政府向けAIソフトウェアを提供することが発表されました。依然として高い株価バリュエーションが懸念されますが、それでも投資家の熱狂は冷める気配がありません。
デッカーズ・アウトドアは2四半期連続の苦戦
UGGやHOKAなどのシューズブランドを展開するデッカーズ・アウトドア(DECK)は、2025年も市場のパフォーマンスを下回る展開が続いています。
主力であるHOKAブランドの成長鈍化に加え、関税の影響懸念も重なり、先月には2026年度の業績見通しを「世界的な貿易政策の不透明さ」を理由に撤回しました。