2025年6月30日の米国市場でオラクル(ORCL)の株価が約5%上昇し、220ドル台に到達しました。背景には、アナリストによる投資判断の引き上げと、クラウドおよびAIインフラ事業に対する強い成長期待が挙げられます。
アナリストが「買い」へ格上げ、目標株価を250ドルに設定
米証券会社シュティフェルは、オラクルの株式評価を「ホールド」から「買い」へ引き上げ、目標株価を180ドルから250ドルに大幅に引き上げました。アナリストは、近年の設備投資の急増と、契約済みサービスからの残存業績義務(RPO)の拡大が、クラウド事業の成長を支えると指摘しています。
クラウドインフラやSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)からの収益増により、2026年度は売上が前年比16%増、2027年度には20%増を見込んでいます。
クラウド収益は2027年度に465億ドル規模に
オラクルのクラウド事業は今後2年間、毎年30%台後半の成長が予想されており、2027年度には総売上が465億ドルに到達すると見られています。この期間におけるオラクルの売上成長は、すべてクラウド関連収益によるものになるという分析です。
特にRPOは前年比で41%増加しており、AI向け計算能力や生成AIのワークロードに対する需要の強さが反映されています。
粗利益率の圧縮と管理能力の両立
同社はクラウド施設拡張のための資本支出を増加させており、短期的には粗利益率の圧縮が見込まれます。しかし、経費管理に優れた経営陣のもとで、人的コストに依存せず、インフラ重視の戦略によって、売上の増加が経費の伸びを上回ると評価されています。
オープンAIとの連携強化、300億ドル規模の契約も発表
オラクルはオープンAIとの協業も進めており、これがクラウド収益のさらなる拡大につながると期待されています。加えて、6月末には、2028年度以降に年間300億ドルを超える売上が見込まれるクラウドサービス契約の締結を発表しました。
この契約に関しては、最高経営責任者サフラ・キャッツ氏が従業員向けに「2026年度は好調なスタートを切った」と述べたことも明らかにされています。同氏は、マルチクラウドデータベースの売上が前年比で2倍以上に成長していることを強調しました。
TikTok継続運営の見通しも株価を支援
前日、ドナルド・トランプ大統領がテレビ番組で、TikTokを中国親会社バイトダンスから買収する用意がある「非常に裕福な人物」がいると述べました。この発言により、米国内でのTikTokの継続運営に対する期待が高まっています。
オラクルのクラウドインフラ上でTikTokが稼働しているため、仮に買収によってTikTokが存続すれば、オラクルにとってもプラス材料になります。米国みずほ証券のアナリストは「AWSやAzureのような競合クラウドが買収グループに含まれなければ、TikTokは引き続きオラクルの大口顧客であり続ける」と述べています。
今後の成長見通しと投資家への示唆
米国みずほ証券は、今回の契約やトランプ大統領の発言が、オラクルの成長モメンタムに対する投資家の信頼をさらに高める要因になるとしています。経営陣が2029年度の売上目標を現在の1040億ドルから引き上げる可能性も示唆しており、これが次の株価上昇のカタリストとなるかもしれません。