米投資銀行ジェフリーズが6月26日に発表した最新レポートによると、米国株市場における個人投資家の存在感がかつてないほど高まっています。プロの機関投資家が見過ごしがちな“個人投資家マネー”が、今や市場を動かす大きな力になっているのです。
個人投資家の売買比率は20%超に上昇
ジェフリーズの報告によれば、個人投資家による取引は市場全体の約20.5%を占めており、ヘッジファンドやロングオンリー型の機関投資家(それぞれ15%未満)よりも多くなっています。
2020年~2021年の「ゲームストップ騒動」の時期には、この比率が25%に達したこともありました。2010年時点では10%程度だったことを考えると、約15年で2倍以上の存在感となったことがわかります。
個人投資家が注目する高回転・低機関保有銘柄
ジェフリーズは、アナリストが「買い推奨」を出している中でも、個人投資家の売買が活発で機関投資家の保有比率が低い銘柄として以下を挙げています。
- レディット(RDDT)
- ソーファイ・テクノロジーズ(SOFI)
- セルシウス・ホールディングス(CELH)
- e.l.f.ビューティ(ELF)
- アドバンス・オート・パーツ(AAP)
- ユナイテッド航空(UAL)
- シーザーズ・エンターテインメント(CZR)
- ファイブ・ビロウ(FIVE)
- バイタル・ファームズ(VITL)
- ウェイフェア(W)
これらの銘柄は、ファンダメンタルズよりも株価チャートや話題性を重視する個人投資家の傾向と合致していると指摘されています。
ロビンフッドの業績に個人投資家の勢いが直結
個人投資家からの人気銘柄の中でも、ロビンフッド(HOOD)は特に注目されています。取引プラットフォーム自体が個人投資家による売買活発化の恩恵を直接受ける構造となっているためです。
米ゴールドマン・サックスのアナリストは6月、ロビンフッドの目標株価を82ドルから91ドルに引き上げました。株式およびオプション取引量が想定を上回る勢いで増加していることを根拠としています。
なお、目標株価91ドルは、予想利益に対して46.5倍のPER(株価収益率)を前提に設定されています。これは、同じく個人投資家に人気の高いコインベース・グローバル(COIN)の55倍よりは割安ですが、チャールズ・シュワブ(SCHW)の19倍や、新規上場したイートロ・グループ(ETOR)の25倍と比べるとかなり高い水準です。
株価上昇は「質」よりも「勢い」
ジェフリーズは、過去6年間の市場分析をもとに「個人投資家の取引比率が高まると、企業の収益性などの『質』よりも株価の勢いが優先されやすい」と指摘しています。特に自己資本利益率(ROE)が低い企業でも、個人投資家の関心が高まる局面ではパフォーマンスが向上する傾向があるといいます。
ロビンフッドが「質の低い企業」であるというわけではありませんが、PERや財務指標よりも、話題性や短期的なトレンドを重視する個人投資家にとっては十分に魅力的な存在といえます。
ロビンフッド株は年初来120%超の上昇
2025年に入ってからロビンフッドの株価は120%以上上昇しています。プロの投資家からは割高とされる水準であっても、勢いに乗った個人投資家にとってはまだ「買い」の対象となっているのです。
“ダム・マネー(愚かな資金)”と呼ばれていた個人投資家の行動は、もはや市場を無視できない要素となりました。株価チャートの流れを読む目に優れた新しい投資主導層が、今後も市場をけん引していく可能性が高まっています。