2025年、オープンAIは大企業や政府機関向けに、AIのカスタマイズとコンサルティングサービスを本格展開しています。この取り組みは、従来のソフトウェア企業が採用してきたモデルを踏襲し、エンジニアや研究者が直接顧客と連携してプロジェクトを進める形式です。サービスの利用には、最低1,000万ドルの契約が必要となります。
最低1,000万ドルからのカスタムAI開発
オープンAIは、GPT-4oなどの大規模言語モデルを、顧客独自の業務データをもとに最適化するサービスを提供しています。提供内容には、モデルのファインチューニングに加え、ChatGPTのような専用アプリケーションの開発支援も含まれます。
すでに国防総省やインド政府、グラブなどがこのサービスを利用しており、契約金額は1,000万ドルから数億ドル規模にまで及ぶこともあります。
ライバルはパランティアとアクセンチュア
この新たな取り組みにより、オープンAIはパランティア・テクノロジーズ(PLTR)やアクセンチュア(ACN)といった大手AI導入支援企業と競合するようになっています。特に、法律や医療など特定業界向けにAIを提供するスタートアップにとっては、大きな脅威となる可能性があります。
FDEチーム設置、パランティア出身者も採用
2025年初頭、オープンAIは「フォワード・デプロイド・エンジニア(FDE)」と呼ばれる専門部隊を新設しました。このチームには最近、パランティア出身のエンジニアを含む十数名が採用されています。FDEは顧客先での業務支援を担当し、AI導入を現場レベルで推進します。
このチームは、研究者アレクサンダー・マデリー氏が率いるカスタマイズ研究チームと連携しており、顧客が10億ドル規模の価値を見出せる製品の開発を目指しています。
専門家によるデータラベリングも導入
ファインチューニングの一環として、オープンAIは医療や防衛などの分野で専門家によるデータラベリングも実施しています。この作業は、一部外部企業に委託されており、スノークルAIやサージAIなどがパートナー候補として検討されています。
モルガン・スタンレーやグラブの導入事例
実績としては、モルガン・スタンレー(MS)が自社の金融アドバイザー向けに、独自のデータを活用したChatGPT型チャットボットを構築した例があります。さらに、シンガポールのグラブは、東南アジアの地図作成業務を自動化するため、GPT-4o Visionモデルをカスタマイズしました。
このプロジェクトでは、360度カメラで撮影された数百万枚の画像を使い、制限速度や一方通行などの道路情報を自動的にラベリングする仕組みが構築されました。
国防総省と2億ドルの契約を締結
オープンAIは、米国国防総省と2億ドル規模の契約を結び、軍事戦略の立案に活用されるAIシステムの開発を進めています。最高商業責任者ジャンカルロ・リオネッティ氏は、同様の大型契約を今後も増やしていく意向を示しています。
法人向けAPI売上は前年比9倍に拡大
オープンAIは、法人向けAPI経由でのAIモデル販売が前年比で9倍に成長し、2025年の売上は20億ドルに達する見込みです。これまで主に個人向けのChatGPTを収益源としていましたが、法人市場の拡大が次の成長エンジンと位置づけられています。
高度なカスタマイズ支援に対するニーズの高まり
これまで、オープンAIは法人によるカスタマイズを旧世代モデルに限定して提供してきました。しかし、AIに関する技術的知見が乏しい企業では、十分に活用しきれないケースも多く、エンジニアの直接支援が求められています。
AIスタートアップDocketのCEO、アルジュン・ピライ氏は「企業は独自の業務文脈をAIに反映させたいという強いニーズを持っている。最新モデルへのカスタマイズ需要は今後ますます高まる」と述べています。
ジョニー・アイブ氏と開発中のAIデバイスにも関心
さらに、オープンAIはアップルの元デザイン責任者ジョニー・アイブ氏と共同でAIデバイスを開発中であり、将来的には法人向けソリューションにも活用される可能性があります。ただし、このデバイスがウェアラブルではないこと以外、具体的な詳細は明かされていません。