2025年、生成AIの競争が激しさを増すなか、メタ・プラットフォームズ(META)はオープンAIから優秀な研究者を次々と引き抜き、AI開発体制の強化を進めています。マーク・ザッカーバーグCEOは、今年4月に公開した大規模言語モデル「Llama 4」が期待されたほどの成果を上げられなかったことを受け、AI部門の抜本的な見直しに着手したようです。
オープンAIの中核研究者4名がメタに移籍
今回メタが新たに採用したのは、オープンAIの研究者であるShengjia Zhao、Jiahui Yu、Shuchao Bi、Hongyu Renの4名です。先週採用された3名に続き、短期間で合計8名のオープンAI研究者がメタに加わったことになります。
Zhao氏とRen氏は、軽量かつ高性能な推論モデル「o1-mini」や「o3-mini」の開発に大きく貢献してきた研究者です。Yu氏はAIの知覚能力、つまり周囲の情報を理解する機能の開発を担当し、Bi氏はマルチモーダルAIの後処理を統括していました。いずれの研究者も中国の大学で学び、米国で研究活動を行ってきた経歴を持っています。
スケールAIのCEOを迎え、スーパーインテリジェンス構想を本格始動
今月、メタはAIスタートアップのスケールAIに143億ドルを出資し、49%の株式を取得する契約を結びました。同時に、同社CEOのアレクサンドル・ワン氏を迎え入れ、社内の「スーパーインテリジェンス」プロジェクトを主導させる方針を明らかにしています。
この一連の動きは、オープンAI、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)といったAI分野のライバル企業に対抗する戦略の一環です。
フリードマン氏やグロス氏とも交渉中
さらにメタは、GitHub元CEOのナット・フリードマン氏とSafe SuperintelligenceのCEOダニエル・グロス氏にも接触しており、両氏が運営するベンチャーファンドの一部を10億ドル以上で買収する交渉を進めていると報じられています。
AI分野における人材と資本の集約が、かつてない規模で進められていることがうかがえます。
オープンAIとの間で激化する人材争奪戦
このような動きに対し、オープンAIのCEOサム・アルトマン氏は先日出演したポッドキャストで「メタはオープンAIの人材に対して1億ドルのサインオンボーナスを提示している」と発言しました。メタ側はこれを否定していますが、優秀なAI研究者の争奪戦が激化しているのは間違いありません。
なお、オープンAIでは過去数年間で合計30億ドル相当の株式が現金化されており、社員の待遇改善にも力を入れています。
AI競争は「人材戦略」へとシフト
技術革新が加速する中、AI分野での競争は単なる開発力にとどまらず、「誰が最も優秀な人材を確保できるか」が勝敗の鍵となりつつあります。
メタ・プラットフォームズの積極的な採用と投資戦略は、AI業界の勢力図を塗り替える可能性があり、今後の動向から目が離せません。