決算発表のナイキ株が急騰!新CEOの改革でV字回復は本物か?

  • 2025年6月28日
  • 2025年6月28日
  • BS余話

2025年6月、スポーツウェア大手のナイキ(NKE)株が大幅に上昇しています。新たにCEOに就任したエリオット・ヒル氏の再建計画に対する期待感から、株価は今月19%上昇し、過去20年以上で最高の月間パフォーマンスとなる見通しです。

アナリストの評価は「買い」に転換

HSBCのアナリスト、エルワン・ランブール氏は、ナイキの最新決算を受けてレーティングを「買い」に引き上げ、目標株価も60ドルから80ドルに増額しました。同氏がナイキ株を「買い」と評価するのは実に3年半ぶりです。「痛みを経た後の“スウッシュ”型回復を期待している」と述べ、新体制による迅速な改革を評価しています。

在庫整理と新製品投入で構造改革を加速

ナイキは在庫一掃のため大幅なディスカウントを実施し、新しいスタイルの投入に備えています。また、スポーツ分野に特化したイノベーションやマーケティングへの投資を強化し、前CEOのジョン・ドナホー氏の下で断絶した卸売パートナーとの関係修復にも取り組んでいます。

さらに、2024年10月以降、上級管理職を中心に10人近くの人材を新たに登用するなど、大規模な組織再編が進行中です。

業績への影響は一時的、再成長に向けた準備段階

これらの取り組みにより、2025年5月期第4四半期の業績は低調となりました。1株あたり利益は前年比で80%以上減少し14セント、売上は12%減の111億ドルとなりました。ただし、経営陣はこの四半期が改革による財務的影響のピークになると説明しています。

このニュースを受けて、ナイキ株は27日の米国市場で16%上昇し、2021年6月以来の最大の1日上昇率を記録しました。しかし、2025年年初来では4%の下落にとどまっており、S&P500指数(SPX)の0.7%上昇を下回っています。

回復の兆しは複数の分野に

在庫水準の改善に加え、パフォーマンス系製品への需要が回復傾向にあり、トランプ政権下で警戒されていた関税の影響も軽微にとどまる見通しです(通年で営業利益率を0.75%押し下げる程度と同社は予測しています)。

第1四半期の売上高については、前年同期比で「1桁台半ばの減少」とのガイダンスが示され、ウォール街の7%減という予想よりも良好でした。これは、2023年第4四半期以降で初めてガイダンスが市場予想を上回ったケースです。

卸売事業の回復も注目されており、北米の卸売部門の売上減少率は8%と、全社平均の12%よりも緩やかでした。これにより、フット・ロッカー(FL)やディックス・スポーティング・グッズ(DKS)など、主要なパートナー企業にとっても好材料となっています。

中長期での株価上昇余地を指摘する声も

ニーダム証券のアナリスト、トム・ニキック氏は、「ナイキが今後12~24カ月でトップラインおよびボトムラインの改善を実現できれば、再び“ストーリー株”として注目される可能性がある」とコメントし、目標株価を66ドルから78ドルへと引き上げました。

なお残る慎重な見方

一方で、テレシー・アドバイザリー・グループのクリスティーナ・フェルナンデス氏は「マーケットパフォーム」を維持し、「改善策は評価するが、売上高の本格回復は2027年以降になる」との見方を示しています。

UBSのジェイ・ソール氏も「中立」を継続しつつ、目標株価を56ドルから63ドルへと引き上げています。同氏は「抜本的な事業再編には時間がかかり、当面は1株利益の見通しが伸び悩み、PERも圧迫される」と分析しています。

現在のバリュエーションは高めも、割安感は残る

現在のナイキ株は、12カ月先の予想利益に対して39倍のPERで取引されており、過去5年平均の29.5倍を大きく上回っています。ただし、売上高に対する株価倍率(PSR)では約2.3倍と、過去10年で最も割安水準にあると、ジェフリーズのアナリスト、ランドール・コニック氏は指摘しています。

同氏は「今の水準はバリュエーショントラフに近く、下値リスクは限定的。今こそ積極的に買うべき時だ」と述べ、現在の水準から75%以上の上昇余地があるとしています。

まとめ:変革期のナイキに投資妙味あり

ナイキは現在、大規模な構造改革を進めており、短期的な業績への影響は避けられない状況です。ただし、経営陣の迅速な対応と市場の反応を見る限り、回復基調は確実に進行中と考えられます。中長期での成長を見据える投資家にとっては、今が絶好のエントリーポイントとなる可能性があります。

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