2025年6月12日に発生したエア・インディアの墜落事故は250人以上の命を奪い、ボーイング(BA)にとって6月は暗い月になると予想されていました。しかし、株価は予想外の回復を見せ、月末にはプラス圏に浮上しています。
墜落事故後も株価は反発、背景にアナリストの強気評価
事故の直後、ボーイングの株価は大きく下落しましたが、6月27日の米国市場では前日比4.3%高の211.4ドルとなり(米国東部夏時間13:45現在)、月間でプラスに転じました。その背景には、ロスチャイルド・アンド・カンパニー・レッドバーンのアナリスト、オリヴィエ・ブロシェ氏による格上げがあります。同氏は、ボーイング株を「中立」から「買い」に引き上げ、目標株価を180ドルから275ドルへ大幅に修正しました。
需要は堅調、今後20年で機体数は倍増へ
ボーイングは2025年の「商業機市場見通し(Commercial Market Outlook)」の中で、世界の単通路および双通路機の保有機数が2024年末の約22,400機から2044年には43,600機へと増加すると予測しています。これは年間2,000機以上の新造機に相当し、長期的な需要は極めて堅調と見られています。
生産体制の立て直しと経営改革が評価材料に
ブロシェ氏は、昨年CEOに就任したケリー・オートバーグ氏の下でボーイングの企業文化と財務体質が改善されていると指摘しています。2010年代後半に膨張した在庫や、2020年末に619億ドルに達した長期債務も徐々に縮小しており、2026年と2027年にはさらなる債務削減が見込まれています。
アナリストは2028年から2029年にかけて、ボーイングがキャッシュフローと債務のバランスを改善し、配当金の再開が可能となると見ています。2020年以来、同社は配当を停止していますが、今後は投資と株主還元の両立が実現すると見込まれています。
安全性への取り組みとFAAとの合意が信頼回復に寄与
ボーイングは近年の一連の事故により、安全性の軽視が市場で問題視されていました。しかし、最近では外注業務の一部を社内に戻し、米連邦航空局(FAA)と安全性に関するパフォーマンス基準で合意するなど、再発防止に向けた取り組みを強化しています。
短期的な財務目標に偏った過去の戦略から脱却し、長期的な持続可能性と信頼性を重視する方向に舵を切っているとブロシェ氏は分析しています。
737および787の増産でキャッシュフロー拡大へ
ボーイングは、今後の収益戦略の中心に737と787の量産を据えています。既に同社は多数の胴体部品やエンジンを在庫として保有しており、それらを活用することで生産を加速できる体制が整いつつあります。
さらに、防衛事業でも不安定だった売上から脱却し、持続的な成長軌道への回帰が期待されています。
アナリストの支持が強まる中、株価は年初来18%上昇
ファクトセットの調査によると、同社をカバーする31人のアナリストのうち21人がボーイング株を「買い」または「オーバーウェイト」に格付けしており、「アンダーウェイト」と評価しているのはわずか1人です。2025年に入ってからの株価上昇率は20%に達し、市場の信頼感が戻りつつあることを示しています。
事故報道が続く中でも、着実に信頼と成長力を取り戻しているボーイング。今後のさらなる業績回復が注目されます。