人工知能(AI)サーバー分野で注目を集めているスーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)ですが、その成長ストーリーには懸念も指摘されています。米調査会社キー・バンク・キャピタル・マーケッツは、情報技術セクターに属する複数企業のカバレッジを開始し、スーパーマイクロ、デル・テクノロジーズ(DELL)、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)に対して「セクターウェイト(中立)」の評価を付与しました。
競争が激化するサーバー市場
キー・バンクは、サーバービジネスが「高度に分散化された市場」であり、レノボやヒューレット・パッカード・エンタープライズのような資金力のある企業がしのぎを削っていると分析しています。価格が差別化要因となるため、サーバーは同社がカバーする製品群の中で最も利益率が低い部類に入ります。
特にスーパーマイクロは特許保有数が少なく、これが構造的に低い利益率につながっていると指摘されました。
成長鈍化への懸念と過大なガイダンス
スーパーマイクロコは2025年度の売上を約220億ドルと見込み、前年比48%の成長を予想しています。さらに2026年度には400億ドルの売上を掲げ、80%以上の成長を見込んでいます。
しかしキー・バンクは、2025年度と2026年度の成長率をそれぞれ48.2%と22%とし、会社側の予測は達成が困難であると見ています。その根拠として、デル・テクノロジーズがイーロン・マスク氏のxAIなど主要顧客を獲得している点や、市場成長の鈍化を挙げています。
顧客集中リスクが株価の変動要因に
xAI はコアウィーブ(CRWV)やテスラ(TSLA)と並んで スーパーマイクロの最大顧客のひとつであると考えられています。直近の四半期の売上高の約 37% は 2 社の顧客によるもので、前期の 58% から減少していますが、それでも高い水準です。これにより、一部の顧客動向によって成長トレンドが大きく左右される懸念が出ています。
業界最低水準の利益率と過去の会計問題
スーパーマイクロは業界内で最も低い営業利益率を記録しており、同社の競争力に対する疑問が浮上しています。さらに、会計面でも問題を抱えてきました。
2018年には財務報告の遅延により上場廃止となり、2年後には米証券取引委員会(SEC)から罰金を受けています。2025年2月にも再度上場廃止の危機に直面しましたが、期限内に財務報告を提出することで回避しました。
現在はSECの要件を満たしていますが、外部監査人BDO USAは財務報告における内部統制に重大な弱点があると指摘しており、依然として不安材料が残っています。
投資家の信頼回復には時間が必要
キー・バンクは、こうした繰り返される問題によってスーパーマイクロの信頼性が損なわれていると述べています。今後は業績で市場の期待を上回ることが、信頼回復のカギになるとしています。
株価は2025年6月時点で年初来60%上昇し、48.7ドルまで回復していますが、投資判断においては成長性とリスクを慎重に見極める必要がありそうです。
*過去記事はこちら スーパー・マイクロ・コンピュータ SMCI