2025年6月、米国市場では半導体関連銘柄が力強い回復を見せ、投資家の注目を集めています。S&P500のセクター別パフォーマンスでは、半導体およびその製造装置セクターが月間で+14.8%の上昇率を記録し、不動産開発セクター(+10%)を大きく上回ってトップに立っています。
米投資情報メディア「マーケットウォッチ」ではこの動きに注目し、「Chip stocks are reclaiming market leadership. Here’s why analysts are optimistic.」という6月26日付けの記事で、半導体株の復調と今後の見通しについて報じています。本記事では、その内容を要約・紹介します。
エヌビディア、株価最高値&時価総額世界一に返り咲き
エヌビディア(NVDA)の株価は6月25日に4%以上上昇し、154.31ドルの過去最高値を記録。時価総額は3.76兆ドルとなり、マイクロソフトを再び抜いて世界首位に立ちました。これは、4月の年初来安値からわずか2か月で約63%の上昇を遂げたことになります。
背景には、同社の最新GPU「ブラックウェル」プラットフォームがAI需要に応える形で市場の信頼を回復し、クラウド事業者や政府関連機関からの需要も追い風となっている点が挙げられます。
マイクロン、AI需要で過去最高の四半期売上を達成
メモリチップ大手のマイクロン・テクノロジー(MU)も好調です。2025年5月期の第3四半期には、売上高が過去最高の93億ドルとなり、アナリスト予想(89億ドル)を上回りました。特にデータセンター向けの高帯域メモリ(HBM)チップの売上が前四半期比で約50%増加し、AIインフラ市場の拡大を強く印象づけました。
ニーダムのアナリストは、「データセンター部門の売上が前年比で倍増したことは、AI需要が依然として旺盛である証拠だ」と述べています。
6月に大きく上昇した注目の半導体銘柄トップ10
マーケットウォッチは、iShares Semiconductor ETF(SOXX)の構成銘柄の中で6月に最もパフォーマンスが高かった10銘柄を以下のように紹介しています(上昇率とリターンは6月25日現在):
銘柄名 | ティッカー | 6月の上昇率 | 年初来リターン |
---|---|---|---|
マイクロン・テクノロジー | MU | +34.7% | +51.4% |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | AMD | +29.5% | +18.7% |
オン・セミコンダクター | ON | +27.9% | -14.8% |
アーム・ホールディングス | ARM | +26.3% | +27.5% |
マーベル・テクノロジー | MRVL | +26.2% | -31.1% |
マイクロチップ・テクノロジー | MCHP | +23.4% | +26.8% |
MKSインスツルメンツ | MKSI | +20.0% | -5.0% |
STマイクロエレクトロニクス | STM | +20.0% | +20.0% |
エンテグリス | ENTG | +19.5% | -16.9% |
ラムリサーチ | LRCX | +19.1% | +33.7% |
AIインフラ投資の恩恵を受けるハードウェア企業
調査会社Radio Free Mobileのリチャード・ウィンザー氏は、「AI関連の収益源は、実はハードウェアやインフラ領域にこそある」と述べています。今後、AIアプリケーションがクラウドからスマートフォンやPCなどの端末上(オンデバイス)へと移行していくことで、マイクロンやクアルコム、MediaTek、サムスン電子などの恩恵が広がると見られています。
ETFを活用した半導体セクターへの分散投資
記事では、iShares Semiconductor ETF(SOXX)への投資も紹介されています。SOXXはPHLX半導体指数に連動し、30銘柄に分散投資が可能です。中でもエヌビディア、AMD、ブロードコムの3社でポートフォリオの24.3%を占めており、AI関連の成長を取り込む構成となっています。
2025年の年初来リターンは+10.5%と、S&P500(SPY:+4.2%)やテクノロジーセクターETF(XLK:+7.6%)を上回っています。
半導体株の再評価が進むAI時代
生成AIの普及、データセンター投資の加速、そしてオンデバイスAIの拡大──こうした要因が重なり、半導体株は2025年の市場で再び注目を集めています。エヌビディアやマイクロンといったリーディング企業だけでなく、SOXXなどのETFを通じて広くこの成長に乗る選択肢も有望です。