2025年、人工知能(AI)ブームの波に乗るかたちで注目を集めているのが、米国の小型原子炉スタートアップであるオクロ(OKLO)です。株価は年初来で160%、過去1年では479%も上昇していますが、規制面での課題が多く、投資家の間では慎重な見方も強まっています。
株価は高騰中も、アナリストは慎重姿勢に転換
調査会社クレイグ・ハラムのエリック・スタイン氏は、6月23日付のリサーチノートでオクロの株式評価を「買い」から「ホールド」に格下げし、目標株価は43ドルから59ドルへと引き上げました。この発表を受け、同社の株価は23日の米国市場で4.9%下落し、終値は55.11ドルとなりました。
独自路線のビジネスモデルが規制上のリスクに
オクロは「建設・所有・運営」までを自社で手掛けるという独特なビジネスモデルを採用しています。これは従来の原子力企業とは異なる道であり、米国原子力規制委員会(NRC)との関係性がカギとなります。
スタイン氏は、同社が「これまで誰も通ったことのない規制上の道を進もうとしている」と指摘しています。初の商用炉となる「オーロラ」は、2027年末から2028年初頭までにアイダホ国立研究所での運用開始を目指しています。
規制面での進展は限定的
同社は2022年にNRCに提出した初期の申請草案が「技術的な情報が不十分」として却下された経緯があります。以降は申請準備を進めており、規制当局との長期的な協議を重ねている段階です。
スタイン氏は、「規制上の進展が明確になるまでは様子を見たい」と述べ、慎重な姿勢を崩していません。
資金調達と商業化までのハードル
オクロは最近、4億ドルの資金を新たに調達しましたが、事業の性質上、今後も多額の追加資金が必要になると見られています。売上が発生するのは商業炉の稼働が始まってからであり、それまでの道のりは長いといえます。
一方で、商業面では米国国防兵站局との間でアラスカのアイールソン空軍基地向けの電力供給に関する仮合意を取り付けるなど、着実に動きが見られます。
規制突破が最大の試練に
今後の展開は、原子力発電所のライセンス取得にかかっています。スタイン氏は、「事業機会が広がっているのは間違いないが、すべてはタイムリーなライセンス取得にかかっている」と述べています。
人工知能の成長と並行して、クリーンエネルギーへの需要が高まる中、オクロの動向は引き続き注目される存在です。しかし、その前に解決すべき規制上の壁は高く、長期目線での評価が求められます。