2025年6月、米国によるイラン核施設への攻撃を受け、国際的な原油市場の不確実性が急上昇しています。もしイランがホルムズ海峡の封鎖を実行に移せば、世界の原油供給の約20%が影響を受けることになります。このような地政学リスクの中で、石油関連株へ投資するには慎重な企業選定が求められます。
米投資情報メディア「マーケットウォッチ」が、財務の健全性とキャッシュフロー効率に着目した石油株のスクリーニングを紹介しています。この記事では、同社が掲載した企業リストのポイントを整理してご紹介します。
スクリーニングの条件とは?
今回のスクリーニングでは、以下の条件が重視されています。
- フリーキャッシュフロー利回り(FCF Yield)が高い
- 負債比率(Debt-to-Equity)が低い
- 一定以上のアナリストによるカバレッジがある(9社以上)
対象となったのは、以下のETFに含まれる企業89社:
- SPDR S&P Oil & Gas Exploration & Production ETF(XOP)
- iShares Global Energy ETF(IXC)
その中から、最終的に20社が「高品質スクリーニングを通過した銘柄」としてリストアップされました。
注目の20銘柄一覧(FCFヘッドルームが高い順)
企業名 | ティッカー | 国 | 配当利回り | FCF利回り | FCFヘッドルーム(差) | 負債比率(D/E) |
---|---|---|---|---|---|---|
国際石油開発帝石(INPEX) | 1605 | 日本 | 4.24% | 13.16% | 12.29% | 24% |
SMエナジー | SM | 米国 | 2.90% | 11.12% | 10.61% | 62% |
デボン・エナジー | DVN | 米国 | 2.80% | 12.42% | 9.35% | 62% |
オヴィンティブ | OVV | 米国 | 2.89% | 11.20% | 9.20% | 67% |
マタドール・リソーシズ | MTDR | 米国 | 2.43% | 10.09% | 7.99% | 60% |
ダイヤモンドバック・エナジー | FANG | 米国 | 2.69% | 10.44% | 7.72% | 36% |
ペトロチャイナ | 857 | 中国 | 7.65% | 12.95% | 7.09% | 23% |
アンテロ・リソーシズ | AR | 米国 | 0.00% | 7.70% | 6.73% | 53% |
シェル | SHEL | 英国 | 3.91% | 10.91% | 6.44% | 43% |
パーミアン・リソーシズ | PR | 米国 | 4.07% | 8.74% | 6.14% | 44% |
ベーカー・ヒューズ | BKR | 米国 | 2.36% | 8.41% | 5.79% | 35% |
コテラ・エナジー | CTRA | 米国 | 3.19% | 8.44% | 5.67% | 32% |
バイパー・エナジー | VNOM | 米国 | 2.95% | 8.70% | 5.23% | 31% |
コード・エナジー | CHRD | 米国 | 4.90% | 7.49% | 5.19% | 10% |
レンジ・リソーシズ | RRC | 米国 | 0.83% | 6.63% | 5.01% | 46% |
セノヴァス・エナジー | CVE | カナダ | 3.98% | 8.45% | 4.93% | 36% |
テナリス | TEN | ルクセンブルク | 4.58% | 8.94% | 4.74% | 3% |
コノコフィリップス | COP | 米国 | 3.29% | 9.00% | 4.67% | 36% |
マグノリア・オイル&ガス | MGY | 米国 | 2.50% | 5.56% | 4.29% | 21% |
インペリアル・オイル | IMO | カナダ | 2.58% | 6.07% | 4.10% | 17% |
用語補足:
- FCF利回り(Free Cash Flow Yield)= 将来予測されるフリーキャッシュフロー ÷ 株価
- FCFヘッドルーム= FCF利回り − 配当利回り(株主還元の余力を示す)
- D/E比率= 長期負債 ÷ 自己資本。70%未満に制限して選別。
投資家にとっての意味合い
多くのエネルギー企業が、パンデミック以降は慎重な生産計画・資本効率の重視・株主還元を方針としています。中でも、フリーキャッシュフローが配当以上に潤沢な企業は、増配や自社株買いによる株主還元余地が大きいと考えられます。
例えば、国際石油開発帝石(INPEX)はFCF利回りが13%を超えており、日本株の中でも際立つ高キャッシュ企業といえます。
ETFで分散投資も有効
個別銘柄のリスクを抑えたい場合は、次のようなETFでの投資も検討に値します。
- XLE(エネルギーセクターSPDR):エクソンモービルやシェブロンなど、米国の大手エネルギー企業が中心
- XOP:中小規模の米国エネルギー企業に均等額で分散
- IXC:世界の主要エネルギー企業に投資(英シェル、仏トタル、カナダや日本の企業も含む)
まとめ:地政学リスクとともに浮上する投資機会
ホルムズ海峡を巡るリスクは今後もマーケットに影響を与える可能性があります。しかし、そうした環境下でも財務的に健全で、安定したキャッシュフローを持つ企業に目を向けることで、比較的リスクを抑えた投資が可能です。
今回のリストは、そうした銘柄を見つける出発点として参考になります。