仮想通貨に関心がない投資家であっても、気づかないうちにビットコインに資金を投じているかもしれません。米金融大手JPモルガンの最新レポートによると、マイクロストラテジー(MSTR)に対して、間接的に最大500億ドルもの資金が流入していることが判明しました。
インデックスに組み込まれたマイクロストラテジー株が資金流入の起点に
マイクロストラテジーは元々IT企業でしたが、現在は世界最大のビットコイン保有企業として知られています。2025年5月時点で、同社は企業として最も多くのビットコインを保有しています。
JPモルガンのアナリスト、ニコラオス・パニギルツォグル氏によると、同社株は主要な株価指数に組み込まれているため、指数連動型のミューチュアルファンドやETFが少なくとも140億ドル相当の株式を保有しています。つまり、インデックスに投資している投資家は、自覚のないままマイクロストラテジー、そしてビットコインに間接的に投資している可能性があるということです。
組み込まれている株価指数
- Nasdaq‑100:非金融セクター上位100社の株価指数。2024年12月23日に正式に採用され、構成比率は約0.47%です 。
- Russell 1000:米国大型株約1,000社を対象とする指数で、マイクロストラテジーもリストに含まれています。
- Russell 3000:米国株市場を広くカバーする指数(大型〜中型)で、こちらも構成銘柄に含まれています 。
- S&P SmallCap 600:小型株向けの指数ですが、マイクロストラテジー(もともと小型株)が組み入れられています 。
- S&P Composite 1500 Information Technology や S&P 600 Information Technology など、IT部門のインデックスにも採用されています。
実際の投資額は500億ドルに迫る可能性
この140億ドルという数字は、インデックスに連動するファンドのみに限定されたもので、アクティブ運用のファンドや、ノルウェー政府年金基金(ノルゲス・バンク)やスイス国立銀行のような大口の機関投資家の保有分は含まれていません。JPモルガンは、これらを加えると総額で500億ドルに達する可能性があると見積もっています。
マイクロストラテジーの時価総額は約1,000億ドルであり、その半分がこうした間接的な投資によって構成されている計算になります。
パッシブファンドによる保有比率が株価に影響
特に注目すべきなのは、パッシブファンド(インデックス連動型ファンド)による保有額が210億ドルを超え、同社の発行済み株式の2割を占めている点です。これは、マイクロストラテジーが将来的に株価指数から除外された場合、大量の売却が発生し、株価に大きな影響を与えるリスクがあることを意味します。
JPモルガンは、「同社の株価は、インデックスへの採用という外的要因に強く依存している」と指摘しています。
優先株での資金調達とビットコインへの依存度の高まり
近年、マイクロストラテジー(現在は「ストラテジー」というブランドで事業展開)は、通常の株式ではなく、利回り最大11%の優先株を発行してビットコインの購入資金を調達しています。
このような高い利回りは、ビットコイン価格の大幅な上昇が継続することを前提としています。もし今後、ビットコイン価格が横ばいまたは下落傾向に転じれば、資金調達コストが企業財務に重くのしかかり、株価下落にもつながる可能性があります。
株価とビットコイン価格の乖離にも注意
2025年に入ってから、マイクロストラテジーの株価は27%上昇していますが、ビットコインの価格上昇は12%にとどまっています。この乖離は、株式市場における同社の特異な立ち位置を反映しています。
同社の株価はビットコインの価格に強く連動する一方、インデックスファンドやETFによる機械的な資金流入・流出の影響も受けるため、一般的な企業とは異なるリスクを内包しています。
日本の投資家にも無関係ではない構造的リスク
米国株に投資している日本の個人投資家にとっても、今回の内容は他人事ではありません。S&P500やナスダックなど、米国主要指数に連動するETFや投資信託に投資している場合、知らないうちにマイクロストラテジー、そしてビットコインに間接投資している可能性があります。
特にNISAやiDeCoでインデックスファンドを活用している方は、構成銘柄にも目を向け、どのようなリスクを保有しているかを再確認することが重要です。
今後、インデックスの構成やビットコイン市場の動向次第では、マイクロストラテジーの株価が大きく変動する可能性があるため、引き続き注意深く観察する必要があります。