スイスの大手金融機関UBSが6月18日に発表した「2024年版 世界富裕層レポート」によると、2024年における世界のミリオネア(資産100万ドル以上保有者)は前年比で68万人増加しました。中でも米国の増加が突出しており、世界の富の重心がさらにアメリカへと傾いていることが明らかになりました。
アメリカのミリオネアは2,400万人に到達
米国では、2024年に新たに37万9,000人のミリオネアが誕生し、総数はおよそ2,380万人に達しました。これは世界全体のミリオネア増加数の過半を占める規模で、背景には米ドルの強さ、暗号資産市場の回復、米国株式市場の堅調な推移があります。
米国の成人1人あたりの平均資産額は31万2,000ドルに達しており、欧州・中東・アフリカ地域のほぼ2倍、アジア太平洋地域の約5倍と、地域間の資産格差が浮き彫りになっています。
国別ミリオネア数の上位5ヵ国
順位 | 国名 | ミリオネア数 | 前年比増減 | 備考 |
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1 | アメリカ | 約2,380万人 | +37.9万人 | 世界のミリオネアの約40%を占める |
2 | 中国(本土) | 約630万人 | +14.5万人 | 人口の多さが全体数を押し上げている |
3 | フランス | 約289万人 | +約2万人 | 欧州で最多のミリオネア数 |
4 | 日本 | 約270万人 | −3.3万人 | 円安や市場低迷の影響を受け減少 |
5 | ドイツ | 約260万人 | −1.3万人 | 小幅な減少 |
ミリオネア密度が最も高いのはスイスとルクセンブルク
総数では米国が群を抜いていますが、人口あたりのミリオネア密度ではスイスとルクセンブルクが引き続き上位を維持しています。特にスイスは、高付加価値産業が集中しており、個人資産の集中度が非常に高い国です。
トルコとUAEが急成長
ミリオネアの増加率で見ると、トルコが前年比8%増と世界で最も高い伸びを記録しました。次いでアラブ首長国連邦(UAE)が5.8%の増加となっています。ただし、トルコでは現地通貨ベースで個人資産が35%増加したものの、高インフレの影響でインフレ調整後の実質資産は14.6%減となっています。
世界の個人資産の54%が米中に集中
世界全体の個人資産のうち、およそ54%は米国と中国に集中しています。ただし、中国の富裕層の多さは人口の多さによるものであり、平均資産額では米国が大きく上回っています。アメリカ以外の地域では、ドルベースで見た資産の成長が停滞しており、地域格差がさらに広がっている状況です。
世界のビリオネアは2,891人、うち31人は資産500億ドル超
資産10億ドル以上を持つビリオネアは、2024年時点で2,891人に達しました。そのうち31人は資産500億ドルを超える超富裕層です。ビリオネアの子どもの数も急増しており、前年の4,136人から6,441人へと増加しています。
「EMILLI」層の台頭
UBSは、資産100万〜500万ドルを保有する「EMILLI(エミリー)」=“Everyday Millionaire”層の増加にも注目しています。この層は2000年以降で世界的に4倍に増え、現在では5,200万人に達しました。かつては一部の超富裕層のみがミリオネアでしたが、現在では多くの国で中間層的な存在となりつつあります。
富の統計は為替とインフレの影響を受けやすい
UBSは、富の比較を行う際には為替レートやインフレ率の影響を慎重に考慮すべきだと指摘しています。地域間や年次間の比較には、こうした経済的変動を加味した分析が不可欠です。
このレポートは、国連、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行などの公的データに加え、PwCと共同構築したビリオネア・データベースを活用して作成されています。