米国株市場でバイオテクノロジー関連の新規株式公開(IPO)熱が高まる中、カリス・ライフ・サイエンス(CAI)は2025年6月18日にナスダックへ上場し、公募価格21ドルに対して初値27ドルを付けました。上場直後には29.40ドルまで上昇し、終値は33.3%高の28ドルとなっています。発行済み株式数は約2億8,356万株で、時価総額は約79億ドルに到達しました。
IPO概要:公募価格を上回る資金調達
カリスはバンク・オブ・アメリカ証券、J.P.モルガン、ゴールドマン・サックス、シティグループを主幹事とし、2,353万株を1株21ドルで売り出し、4億9,400万ドルを調達しました。設定レンジ(19〜20ドル)を上回る価格決定は、市場の強い需要を物語っています。
株価初動:28%高の好スタート
公開初日は公募価格比+28.6%で寄り付き、取引序盤に29.40ドルへ到達後も堅調に推移しました。上場直後からの高い出来高は、AIを活用したバイオテクノロジー企業への投資家関心の高さを示しています。
事業内容:AIが支える分子プロファイリング
カリスはがん領域を中心に「マルチモーダル・クリニコゲノミクスデータセット」を構築し、血液中の全コーディング遺伝子を解析するCaris Assureプラットフォームを提供しています。累計650万件超の検査データからAIで9.15億件の病原性変異を特定し、一人あたり平均130件の新規変異を発見しました。今後は循環器疾患や神経疾患、代謝性疾患など慢性疾患領域にも展開し、予防医療を視野に入れています。
財務ハイライト:売上50%増、赤字幅は縮小
2025年3月期第1四半期(1〜3月)の売上は1億2,090万ドルで前年同期比+50%を達成しました。一方、純損失は1億258万ドルと前年同期の1億1,103万ドルから縮小しており、継続的な投資を行いながらも収益性の改善が進んでいます。2019〜2024年の年平均売上成長率は28%と高い伸びを維持しています。
競合比較:ETF構成銘柄を上回る時価総額
同社の時価総額は、iシェアーズ・バイオテクノロジーETF(IBB)を構成する252銘柄のうち222銘柄を上回ります。AIとゲノム解析を融合した“TechBio”という独自ポジションが、従来型バイオ企業との差別化要因になっています。
IPO市場の潮流:多様な新規上場案件が続出
オンライン銀行サービスのチャイム・フィナンシャル(CHYM)、宇宙テクノロジーのボイジャー・テクノロジーズ(VOYG)、ステーブルコイン発行のサークル・インターネット・グループ(CRCL)など、直近の成功例は業種を問わず投資家が新規株式に強い関心を寄せていることを示しています。カリスの上場は、この流れにバイオテクノロジー分野が本格合流した象徴的な出来事です。
今後の注目ポイント
- 臨床データ拡充と慢性疾患領域への参入
- AI解析アルゴリズムの精度向上と新規特許の取得
- 戦略的提携や共同開発によるシナジー拡大
- 黒字化タイミングとキャッシュフローの改善状況
カリス・ライフ・サイエンスはAIとゲノム解析を融合させたプラットフォームを武器に、がん治療のみならず慢性疾患の予防医療市場への進出を計画しています。IPOで得た資金を活用し、データセットの拡充とパイプライン強化を推進する姿勢が、今後の成長ドライバーになると考えられます。