米小売最大手であり、クラウド分野でも世界をリードするアマゾン・ドット・コム(AMZN)のアンディ・ジャシーCEOは6月17日、人工知能(AI)の活用により、今後数年間で企業従業員の数が減少する見通しを示しました。
「AIが働き方を変える」
ジャシーCEOは社員向けのメールで、「生成AIやAIエージェントによって、働き方が大きく変わる」と述べました。今後は、現在人が担っている業務の一部をAIが代替し、新たな職種が生まれるとしています。
その上で「どのような結果になるかは明確ではないが、AIの導入による効率化により、企業全体の人員は減少する」と見通しを語りました。
業界全体に広がるAIによる人員見直しの動き
AIの普及により業界全体で人員見直しが広がっています。
カナダのEC企業ショッピファイ(SHOP)では、新たな人材の採用時に「なぜAIで対応できないのか」を説明することが求められています。
語学学習アプリを展開するデュオリンゴ(DUOL)は、AIで代替可能な契約社員の業務を段階的に削減すると発表しました。マイクロソフト(MSFT)も最近、ソフトウェア開発者を中心にレイオフを実施しています。
また、AI開発企業アンソロピックのCEOダリオ・アモデイ氏は、「今後5年でエントリーレベルのホワイトカラー職の半数がAIに置き換えられ、失業率が最大20%に達する可能性がある」と警告しています。
アマゾン社内でのAI活用と今後の戦略
アマゾンは以前から、物流や本社業務の自動化に注力してきました。今回ジャシーCEOは、音声アシスタント「Alexa+」、ショッピング支援AI、そしてアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が提供する開発者・企業向けのAIツールなど、多数のAI関連プロジェクトを紹介しました。
また、社内ではすでに在庫配置やカスタマーサービス、商品説明などにAIを活用しており、社員に対して「積極的にAIを試してみてほしい」と呼びかけています。
アマゾンの雇用構造とAI導入による影響
アマゾンは、ウォルマート(WMT)に次ぐ米国第2位の民間雇用主であり、2025年3月末時点で総従業員数は約156万人です。その多くは物流拠点に勤務しており、本社の管理部門の従業員数は約35万人に上ります。
今回のAI導入による人員削減は、この管理部門に影響を与えると見られます。従来の業務が縮小される一方で、新しいスキルや職種へのシフトも必要になると考えられます。
AI時代における人材戦略の転換がカギに
アマゾンのような大手企業がAIによる効率化を積極的に進めるなか、他の企業もこの流れに追随していく可能性があります。人員削減だけでなく、社員一人ひとりが新しい働き方や役割にどう対応していくかが、企業経営とキャリア形成の大きな課題となります。
AIの進化は止まりません。企業も個人も、この変化に柔軟に対応していく力が求められています。
*過去記事はこちら アマゾン AMZN