2025年6月現在、米国株式市場では個人投資家の買い意欲が衰えを見せておらず、相場の下支え要因として注目されています。ゴールドマン・サックス(GS)は、この動きが今後の株価を支える重要な要素になると指摘しています。
S&P500は上昇基調、個人投資家の影響力が強まる
代表的な株価指数であるS&P500(SPX)は、直近で1%高の6,040付近で推移しています。今年の上昇率は約2.7%で、2月の過去最高値6,144からはわずか1.7%下の水準です。
こうした不安定な相場でも、個人投資家は積極的に株式を購入しており、ゴールドマン・サックスはこれを好材料と捉えています。
「リベレーション・デー」後の下落も買いのチャンスに
4月2日にトランプ大統領が発表した「リベレーション・デー」に関する貿易政策により、市場は一時的に混乱しましたが、個人投資家はこの下落を買い場と見なしたようです。
ゴールドマン・サックスのデビッド・J・コスティン氏率いるチームによると、証券会社の報告や一部の個人投資家に人気の銘柄の急騰からも、積極的な買いが確認されています。
マージン債務は高水準、ETFと投信の動きとは対照的
同社の調査によれば、米国の個人投資家は平均を上回る水準のマージン債務(借入投資)を維持しており、2025年3月中旬以降の3か月間でおよそ200億ドルの個別株を純買い越ししています。
一方、ミューチュアルファンドやETFへの資金流入は限定的で、個人投資家の直接的な株式投資が際立っています。
個人投資家は米国株の最大の保有者
ゴールドマン・サックスによると、米国株の約38%は個人投資家が直接保有しており、これはETFやミューチュアルファンド(約26%)を上回ります。つまり、個人投資家の動向は市場全体に大きな影響を与えているのです。
2022年の米連邦準備制度の調査では、米国の約60%の世帯が株式を保有しており、そのうち21%が個別株を所有しています。これはコロナ禍以降の投資ブームを背景に増加傾向にあります。
富裕層に集中する株式資産
株式投資が広がりを見せている一方で、保有資産の多くは富裕層に集中しています。ゴールドマン・サックスのデータによれば、米国世帯が保有する株式の約87%は上位10%の富裕層が所有し、そのうち43%は最上位1%によるものです。
それでも、個人投資家全体による資金流入は、市場にとって大きな支えとなっています。
家計の健全性が株価の下支えに
ゴールドマン・サックスは、個人投資家による株式の高水準な保有と継続的な買い意欲が、株式のバリュエーションを支えると分析しています。
米国の家計債務水準はここ数年で増加していますが、所得の伸びによって支払能力は維持されています。セントルイス連邦準備銀行によれば、2024年第4四半期の家計の債務返済負担は所得の約11%にとどまり、過去30年で最低水準に近い状態です(コロナ禍の特例期間を除く)。
雇用と金利動向が今後の焦点
2025年5月の米国雇用統計では、13.9万人の新規雇用が創出されるなど、労働市場は安定しています。米連邦準備制度理事会(FRB)は6月中旬に政策会合を開きますが、金利は据え置きとの見方が大勢で、年末までに0.25~0.75ポイントの利下げが実施されるとの予想が広がっています。
今後も雇用と家計の健全性が保たれれば、個人投資家の株式需要は持続し、米国株市場を下支えする力になると考えられます。個人投資家の動きは、今後の相場を占ううえでますます重要なポイントになりそうです。