ビザとマスターカード株が急落!ステーブルコインがクレカ業界に与える衝撃

  • 2025年6月14日
  • 2025年6月14日
  • BS余話

2025年6月13日、クレジットカード大手であるビザ(V)マスターカード(MA)の株価が大幅に下落し、ダウ工業株30種平均構成銘柄の中でも特に下げ幅が目立ちました。この背景には、大手小売業者による「ステーブルコイン」導入の検討があると報じられたことが影響しています。

小売企業がステーブルコイン発行を検討

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ウォルマート(WMT)を含む複数の小売企業が、独自のステーブルコインを発行する可能性を検討しているとのことです。ステーブルコインとは、米ドルなどの資産に価値を連動させた暗号資産で、価格の安定性が特徴とされています。

この動きの背景には、カード決済時に発生する手数料を回避し、決済コストを削減したいという小売側の思惑があります。ウォルマートはコメントを控えましたが、マスターカードは「ステーブルコインの可能性を信じている」とし、将来的な受け入れに前向きな姿勢を示しました。

投資家の懸念とアナリストの見解

市場では、ビザとマスターカードのような従来型の決済ネットワークが脅かされるのではないかという懸念が高まりました。しかし一部のアナリストは、こうした懸念は過剰反応であると指摘しています。

ベアードのアナリストであるデービッド・コーニング氏は、「消費者はクレジットカードの利便性を好んでおり、ポイント還元や後払いのメリットを手放したがらない」とコメントしています。さらに、ステーブルコインを利用するために資金を移動する手間や、既存の銀行口座引き落としサービスが普及していない現状を踏まえると、急速な普及は難しいという見方を示しました。

バーンスタインのハルシタ・ラワット氏も同様に懐疑的で、「ペイパル(PYPL)もすでにステーブルコインを導入しているが、大きな成功を収めているとは言い難い」と分析しています。

下落局面は買いのチャンスか?

一方で、ウィリアム・ブレアのアンドリュー・ジェフリー氏は、今回の下落を逆にビザやマスターカードの株式を買い増す好機と捉えています。同氏は「ステーブルコインは一般消費者向け決済には適していない。あくまで商業者側のコスト削減手段にすぎない」と述べました。

規制の行方と政府のスタンス

ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、小売業界はステーブルコインの業界規制を促進する「Genius Act(ジーニアス法)」への支持を強めているとのことです。

TDカウエンのジャレット・サイバーグ氏は、「政府が民間企業による広範なステーブルコイン発行を容認するのかは疑問が残る」としつつ、「瞬時決済の推進は時間の問題であり、これはビザやマスターカードにとってリスクとなり得る」と指摘しています。

ただし、ビザとマスターカードは、いわゆる「インターチェンジ手数料(加盟店手数料)」を直接受け取っているわけではなく、決済ネットワークの利用により間接的な利益を得ています。そのため、銀行側にも現行の決済構造を維持するインセンティブがあるとされています。

しかし、サイバーグ氏は「アマゾンやウォルマートのような大手小売企業の圧力によって、銀行がより低コストかつ高速な決済手段を模索せざるを得なくなる可能性がある」とも述べています。

今後の展望

現時点では、ステーブルコインが米国における日常的な決済手段として広く採用される可能性は限定的と見る専門家が多い一方で、決済業界の変革を促す契機となる可能性も否定できません。ビザとマスターカードの投資家にとっては、こうした動向を慎重に見極めることが求められます。

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