2025年6月13日、米国株式市場は突如として地政学リスクに直面しました。報道によれば、イスラエルがイランの核施設とミサイル関連拠点を空爆し、中東地域におけるさらなる軍事的緊張が懸念されています。これを受けて、投資家心理が一変。株式市場は下落、ボラティリティが急上昇し、安全資産への資金流入が加速しました。
VIXが急騰、米国株は下落
6月13日の米国市場午前の段階で、S&P500は1%超の下落、ナスダックも1.1%安となり、年初来高値圏から反落しました。市場の恐怖指数とされるVIX指数は20.84を記録し、6月6日まで9週間にわたって下落していた流れが一気に反転しました。
これまでウクライナ情勢や台湾問題といった地政学リスクがあったにもかかわらず、株式市場は楽観的な動きを見せていましたが、今回ばかりは「無反応状態」からの脱却と評価されています。
金・原油が急上昇、安全資産へ資金シフト
投資家がリスク回避に動いた結果、金は1オンス3,416ドルに上昇。過去最高の3,500ドルに迫る水準です。
原油も大きく反応し、ブレント原油先物は15%、WTI原油は9%上昇。中東の供給不安とホルムズ海峡を巡る緊張が高まったことで、原油市場に大きなインパクトを与えました。
インフレとFRBの金融政策に影響も
原油高は米国のインフレ再加速を引き起こす可能性があり、FRB(連邦準備制度理事会)による利下げスケジュールに遅れが出るとの観測も浮上しています。これまで2%に近づいていたインフレ率は、原油価格の上昇によって逆風を受ける見込みです。
投資家の資金流出、リスクオフの動き強まる
バンク・オブ・アメリカのレポートによると、今週は約98億ドルが米国株式市場から流出。これは3カ月ぶりの規模で、投資家が警戒感を強めていることを示しています。
一方で、「トランプ大統領の税制延長や景気刺激策が株式市場の追い風になる」との期待も残っており、強弱感が交錯する相場展開となっています。
今後の注目ポイント
LPLファイナンシャルのアナリストは、「株価がさらに上昇するには、企業決算の上振れ、関税の引き下げ、トランプ政権による大型法案の成立、そして金利の安定的な低下が必要」と指摘しています。
いまや、投資判断において企業のファンダメンタルズだけでは不十分であり、地政学とマクロ経済の両面に目を向ける必要がある局面に来ているといえそうです。