米国のデータ解析企業パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の株価は、2025年6月11日に過去最高値を更新しました。しかし、その高すぎる評価に対しては懸念の声も上がっています。シティグループの調査によれば、同社には依然として成長の可能性があるものの、一部の事業領域には不確実性が残されているとの見方です。
人工知能プラットフォーム(AIP)への期待
シティグループのアナリスト、タイラー・ラドケ氏は、パランティア株の投資判断を「中立」、目標株価を115ドルに据え置いています。同氏によると、パランティアは最新の人工知能プラットフォーム(AIP)の導入に積極的で、同社の主力4製品の中でも特に注目されているとのことです。
AIPは、従来のソフトウェアに生成AIを統合し、より高度な意思決定支援を可能にするプラットフォームです。なお、シティグループ自身も2025年4月にパランティアと契約を締結し、富裕層向け資産運用部門でのデータ活用を始めています。
金融分野での拡大と回復
これまでパランティアは金融業界での展開に課題を抱えていましたが、シティとの契約をきっかけに導入案件が拡大しています。ラドケ氏は、これは「これまでの苦戦を挽回する好材料」と評価しています。
政府向け契約の不透明感
一方、政府関連事業では契約の変動が見られています。とくにトランプ政権下での人員削減や予算縮小の影響が指摘されています。
また、トランプ大統領が推進するミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」が新たなビジネスチャンスになる可能性もありますが、現時点でパランティアは詳細を公表しておらず、不透明感が残っています。
欧州から中東へ戦略シフト
国際展開においては、欧州での商用案件が停滞しています。特にAI導入に対する購買意欲の低さが課題であることから、同社は中東地域へのシフトを進めています。政府および民間の双方に新たな商機を見出そうとしているのが現状です。
株価評価の妥当性に疑問も
パランティア株は現在、極めて高い評価水準で取引されています。2025年6月12日時点での予想株価収益率(P/E)は210.87と、S&P500平均の21.76を大きく上回っています。さらに、予想エンタープライズバリュー対売上高倍率(EV/Sales)は71.81に達しており、過去の事例ではこの水準を超えたソフトウェア企業のリターンはあまり芳しくありません。
実際、ウォール街のアナリスト28人のうち、「買い」またはそれに相当する評価をしているのは6人にとどまり、慎重な見方が優勢です。
株価は過去最高水準を維持
パランティアの株価は6月11日に一時140ドルの最高値を記録した後、136.39ドルで取引を終えました。これは前日の終値136.35ドルをわずかに上回る水準です。
まとめ:成長と過熱評価のバランスが焦点に
パランティアはAIPなどの成長分野で収益機会を拡大していますが、政府契約の不透明性や過度な株価評価がリスク要因となっています。今後、これらの成長が実際に業績として実現され、現在の株価水準を正当化できるかどうかが投資判断のカギとなります。
*過去記事はこちら パランティア PLTR