米国の新興原子力企業オクロ(OKLO)の株価は、2025年6月12日の日中の取引でやや下落しました。前日に29%の急騰を記録して過去最高値で取引を終えたばかりの同社が、4億ドル規模の普通株式の公募を発表したことが背景にあります。
公募の目的と資金の使途
オクロは今回の株式売出しにより得られる純収益を、一般的な企業活動資金、運転資金、設備投資、および将来的な投資に充てると説明しています。ただし、米証券取引委員会(SEC)に提出した書類の中で、政府からの支援や税制優遇制度への依存がビジネスモデルのリスク要因であることを明記しており、特定の政策変更が資金調達能力や財務状況に影響を与える可能性があるとしています。
特に注目すべきは、建設着工や稼働開始の期限が定められた法案が可決された場合、それに間に合わなければ特定の投資税額控除や生産税額控除が受けられなくなるという点です。オクロはアイダホ国立研究所での初号機の稼働を2027年末から2028年初頭に予定しており、今後のスケジュール管理が一層重要になります。
株価急騰の背景にあるアラスカ空軍基地への電力供給計画
オクロの株価は、同社がアラスカ州のアイールソン空軍基地への電力供給企業として仮選定されたというニュースを受けて、前日に29%も上昇しました。このプロジェクトは約2年遅れでの進展となり、投資家からは長らく注目されていた内容です。
また、今週にはオクロが初号機の所有・運営に関するライセンス取得プロセスで前進があったことも発表されており、商用化に向けた流れが加速している印象を与えました。
クリーンエネルギー需要の高まりとオクロの優位性
今後の原子力業界全体の成長にも注目が集まっています。アメリカ国防総省は、2050年までに国内の原子力発電能力を現在の4倍に拡大する方針を掲げており、その実現には新興企業の役割が重要です。
特に人工知能(AI)の急速な普及により、今後の電力需要が急増すると予想されています。計算能力の必要量は2030年までに10倍に達する見込みであり、AIを支えるためのクリーンエネルギー源として、オクロの存在感は高まっています。
ウェドブッシュ証券は、オクロの株価目標を従来の55ドルから75ドルに引き上げ、投資判断を「アウトパフォーム」としています。同社の「建設・所有・運営」モデルは、他社との差別化につながると評価されています。
他の関連企業の動向も追い風に
6月11日には、タレン・エナジー(TLN)がアマゾン・ドット・コム(AMZN)との提携拡大を発表し、核電力業界全体が活気づく展開となりました。これにより、オクロを含む同分野の企業への期待が一段と高まっています。
まとめ
オクロは今週、株価急騰、米空軍との提携、株式公募、ライセンス進展と多くの注目ニュースを連発しました。公募発表による一時的な下落はあるものの、長期的には原子力とAI需要の交差点に位置する同社の戦略は市場に大きなインパクトを与える可能性があります。今後の動向に注目です。