2025年6月5日に上場したステーブルコイン企業サークル・インターネット・グループ(CRCL)の株価は、わずか1週間で31ドルから約113ドルへと急騰しました。4倍近い上昇は、ウォール街における暗号資産関連株への期待の高まりを象徴しています。
サークルだけではない、続く暗号資産IPOの波
サークルの成功に続き、暗号資産関連企業の上場が相次いでいます。2025年5月14日には暗号資産ブローカーのイートロ・グループ(ETOR)が上場し、同月16日にはマイケル・ノヴォグラッツ氏が率いる暗号投資会社ギャラクシー・デジタル(GLXY)がナスダックに登場。ギャラクシーはカナダのトロント証券取引所でも取引されています。
こうした動きは始まりに過ぎません。今後も多くの暗号資産企業が上場準備を進めています。
ウィンクルボス兄弟のジェミニもIPO準備中
注目のひとつが、ウィンクルボス兄弟が運営する暗号資産取引所ジェミニです。同社は米証券取引委員会(SEC)に機密扱いでIPOを申請済みで、株数や価格帯、収益情報などは今後公開される予定です。
その他にも、OpenSea、KuCoin、Kraken、Bullish、Consensys、Rippleといった評価額10億ドル超のユニコーン企業が上場候補として名を連ねています。
業界の転機と語るナカモトCEO
ビットコインを保有する企業として知られるナカモト社の創業者兼CEO、デビッド・ベイリー氏は「サークルの成功は数十億ドル規模の価値を投資家に解き放った」と評価。自社はKindlyMDとの合併を通じて、上場体制を整えつつあると述べています。
ビットコインを企業資産として保有している例には、テスラ、ブロック(旧スクエア)、ゲームストップなどもあります。
規制緩和が後押し、トランプ政権の影響
ベイリー氏は、暗号資産関連企業のIPOが活発化する背景として、2つの要因を挙げています。ひとつは市場における暗号資産株の高パフォーマンス、もうひとつは規制環境の改善です。
トランプ大統領は「暗号資産担当官(Czar)」を任命し、戦略的ビットコイン備蓄の導入を進めています。また、SECの規制執行方針も緩和され、暗号資産業界全体に追い風が吹いています。
分散投資の新たな選択肢としてのIPO
JPモルガン証券のストラテジストは、「ビットコイン以外への分散投資手段として、暗号資産関連企業のIPOが注目されている」と指摘。現在、ステーブルコイン法案が上院で審議中であり、これがさらなる上場やベンチャーキャピタル資金の呼び水になると見られています。
暗号資産関連IPOの数は、2021年の盛り上がりに匹敵するペースで推移しています。
冷静な視点と選別眼が問われる局面
とはいえ、暗号資産市場は依然として高いボラティリティを抱えています。急騰に飛び乗る個人投資家がいる一方で、下落局面では一斉に売却に走る傾向もあります。
ベイリー氏は「ビットコインには上昇・下落のサイクルがある」と述べ、「真に強い企業だけが生き残る」と強調。どの企業が将来の勝者となるかを見極める投資家の眼力が問われています。
暗号資産関連株は現在、強気相場に支えられていますが、それが永続的な状況であるとは限らず、どんな株式投資にも共通するリスクが存在することを忘れてはなりません。