2025年6月12日、デジタル銀行のチャイム・ファイナンシャル(CHYM)がナスダック市場に上場し、初日から大きな注目を集めました。公募価格は27ドルでしたが、初値は43ドルと約60%の急騰を記録しました。その後下落しましたが、終値は37.11ドルとなり、好調な滑り出しとなりました。
IPOの規模と市場の評価
チャイム・ファイナンシャルは、3200万株の株式を売り出し、そのうち2600万株を自社が、残りは既存株主が放出しました。このIPOによって、同社は約7億ドルの資金を調達し、既存株主を含めた総額は8億6400万ドルにのぼります。完全希薄化ベースでの評価額は約184億ドルとされており、これは直近のプライベート資金調達での250億ドル評価を下回りますが、市場の関心は依然として高い状況です。
フィンテックIPOの波に乗るチャイム
先週上場したステーブルコイン企業サークル・インターネット・グループ(CRCL)は、上場後に株価が280%近く上昇しており、チャイムもその勢いに続く形となりました。さらに、防衛・宇宙関連のボイジャー・テクノロジーズ(VOYG)も大幅に値を上げるなど、IPO市場全体の熱気が戻ってきていることがうかがえます。
チャイムのビジネスモデルと成長戦略
チャイム・ファイナンシャルは、連邦預金保険公社(FDIC)に対応した2つの提携銀行と連携し、オンラインの普通預金・当座預金口座を提供しています。若年層を中心に人気があり、特に「MyPay」(給与の一部を最大500ドルまで早期に受け取れるサービス)や「SpotMe」(当座貸越保護機能)といった機能が高く評価されています。多くのサービスが無料または低手数料で提供されており、伝統的な銀行にはない利便性が支持されています。
利益成長と収益モデル
同社の主な収益源は、顧客がチャイムブランドのデビット・クレジットカードを利用する際に、ビザ(V)などの決済ネットワークから得られるインターチェンジフィーです。売上は2024年に30%以上増加し、2025年第1四半期も32%の成長を記録しています。2024年通年では2500万ドルの損失を出しましたが、これは前年よりも損失幅が縮小しており、2025年第1四半期には黒字転換を果たしました。
競合との比較と将来への期待
チャイム・ファイナンシャルは、しばしばソーファイ(SOFI)と比較されますが、現時点ではソーファイの2024年売上の約4.4倍という評価に対し、チャイムは約10倍の株価売上高倍率で取引されています。この高評価を維持するには、黒字化を継続し、成長を証明し続けることが求められます。
デジタルバンク市場の今後
レストィブ・ベンチャーズのマネージングパートナーであるライアン・ファルビー氏は、「このような企業は実際に消費者の課題を解決しており、すでに大手企業として確立されつつある」と語っています。デジタルバンクへの需要は堅調であり、チャイムのような企業が今後も成長を続ける可能性は十分にあると考えられます。
チャイム・ファイナンシャルのIPOは、デジタル銀行という新たな時代への大きな一歩となりました。伝統的な金融機関では満たしきれないニーズに対応するビジネスモデルは、今後も投資家にとって魅力的な選択肢であり続けると予想されます。