AMDが次世代AIチップ「Instinct MI350シリーズ」を発表、エヌビディアに迫るか

  • 2025年6月13日
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アメリカの半導体企業アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は2025年6月12日、人工知能(AI)向け最新チップ「Instinct MI350シリーズ」を正式に発表しました。同社はこの新製品によって、AI分野で圧倒的なシェアを誇るエヌビディア(NVDA)に対抗する構えです。

Instinct MI350シリーズが実現する性能と省エネの飛躍

今回のイベント「Advancing AI」にて発表されたのは、Instinct MI350XおよびMI355Xの2モデルです。AMDによると、この新シリーズは前世代比でAI演算性能が4倍、AI推論処理能力は35倍に向上しているとされています。

さらに、MI355Xは競合製品と比較してコストあたりの生成トークン数が最大40%多く、価格性能比の面でも優位性を持つと説明されています。加えて、同社はAIハードウェアのエネルギー効率において5年間の目標を達成したとし、今後も省エネ性能の向上を継続していく方針を示しました。

メタやオラクルが採用、大手企業の支持を獲得

メタ・プラットフォームズ(META)は、既に前モデルのInstinct MI300XをLlama 3およびLlama 4の推論処理に活用しており、今回もMI350シリーズを採用すると発表しています。さらに、同社はAMDと次世代チップ「Instinct MI400シリーズ」の開発においても連携を続ける意向です。

また、オラクル(ORCL)のクラウド部門であるOracle Cloud Infrastructureは、MI355Xを使用したラックスケールAIインフラを導入予定で、最大13万個以上のGPUを顧客向けに提供する計画です。

市場シェアはわずかでも数十億ドル規模のビジネスに

AI向け半導体市場は年々拡大しており、バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ヴィヴェク・アリヤ氏によると、将来的にエヌビディアが市場の80%以上を占めると予測されています。一方で、大手テック企業による自社製チップが10〜15%、AMDは3〜4%のシェアを獲得できる可能性があるとされています。

市場規模が4,000億ドルを超えることが想定されるなか、たとえシェアが数%であってもAMDにとっては数十億ドルの売上が見込めることになります。

課題も残るが、成長の余地は十分

AMDは2024年にデータセンター関連売上として126億ドルを計上しましたが、これはエヌビディアの同部門(1,152億ドル)の約9分の1にとどまります。ただし、InstinctシリーズによるAI関連売上は50億ドルを超え、心理的な節目を突破したという評価もあります。

なお、オッペンハイマーのアナリスト、リック・シャファー氏は過去に「投資家の期待が常に高すぎた」と指摘していますが、パイパー・サンドラーのハーシュ・クマール氏は「50億ドル突破は重要なマイルストーン」との見方を示しています。

サウジとの10億ドル規模の提携も追い風に

AMDは2025年5月、サウジアラビアのAIスタートアップ「Humain」と5年間で100億ドル規模のパートナーシップを結んだことも発表しています。ローゼンブラット証券のアナリストはこれを「前向きな動き」と評価し、米中貿易リスクをある程度相殺できる可能性があるとしています。

まとめ:AI市場におけるAMDの次なる一手に注目

AI市場ではエヌビディアが依然として圧倒的な存在ですが、AMDの新たなInstinct MI350シリーズや主要顧客との提携、エネルギー効率の向上といった取り組みにより、同社の存在感は確実に増しています。今後の売上動向や次世代MI400シリーズの展開にも注目が集まります。

*過去記事はこちら  AMD

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