2025年6月11日、宇宙および防衛技術を手がけるボイジャー・テクノロジーズ(VOYG)がニューヨーク証券取引所に上場し、初日の取引で大きな注目を集めました。公開価格は31ドルでしたが、初値は69.95ドルと126%の急騰。取引中には一時73.95ドルまで上昇し、その後やや下落して終値は57.13ドルとなりましたが、それでも公開価格を84.6%上回る水準です。
株式売出しを拡大、時価総額は約33億ドルに
当初、ボイジャーは1,100万株の売出しを予定していましたが、最終的に1,235万株に引き上げられました。終値ベースでの企業評価額は約33億ドルに達し、宇宙・防衛分野に対する市場の高い期待が伺えます。
NASAが最大の顧客、民間宇宙ステーション「Starlab」の設計を担当
ボイジャーは、アメリカ航空宇宙局(NASA)との2億1,750万ドルの契約を受注しており、国際宇宙ステーション退役後の次世代施設として注目される民間宇宙ステーション「Starlab」の設計を担当しています。2024年の売上は1億4,420万ドルで、そのうち約25%がNASAからの収入です。
売上は成長傾向、ただし赤字も拡大
売上は2023年比で6%増加し、2025年第1四半期にはさらに14%の成長を記録しました。一方で、赤字幅は拡大しており、2024年の純損失は6,560万ドルと、前年の2,520万ドルから大幅に増加。2025年第1四半期も2,790万ドルの赤字となっています。
宇宙・防衛分野への投資熱が加速
今回のIPOは、先週上場したステーブルコイン企業サークル・インターネット・グループ(CRCL)に続くものです。さらに、翌12日にはオンライン銀行サービスを提供するチャイム・ファイナンシャル(CHYM)の上場も予定されており、IPO市場は活況を呈しています。
また、類似企業としては2025年2月に22ドルで上場したカーマン・ホールディングス(KARMAN)があり、現在では株価が2倍以上に上昇。宇宙・防衛関連企業への投資熱が持続していることが示されています。
ピッチブックのアナリスト、アリ・ジャヴァヘリ氏は「ボイジャーやカーマンの成功は、民間と軍事の両領域をまたぐ企業に対する市場の関心の高さを物語っている」とコメントしています。
国家安全保障と「ゴールデンドーム構想」への期待
ボイジャーは、トランプ大統領が提唱するミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」への関与も期待されており、国家安全保障という観点からも重要な位置づけにあります。
同社に早期投資していたセラフィム・スペース・インベストメント・トラストのマネージング・ディレクター、ロブ・デスボロー氏は「今回の上場は宇宙産業の商業的成熟を象徴する重要な転換点」と語り、「ボイジャーの成功が、他の優良宇宙企業の上場を促す可能性もある」と述べました。
宇宙は“最後のフロンティア”——投資家にとっても
宇宙が宇宙飛行士にとっての“最後のフロンティア”であるように、投資家にとってもこの分野は未開拓で大きな可能性を秘めた市場です。ボイジャー・テクノロジーズの成功は、その扉を開く第一歩となりました。