2025年6月11日、エヌビディア(NVDA)の最高経営責任者ジェンスン・フアン氏が、量子コンピューティングに対するこれまでの慎重な姿勢を大きく転換しました。パリで開催された「Nvidia GTC Paris」での登壇にて、フアン氏は「量子コンピューティングは転換点にある」と語り、実用化が「数年以内」に現実のものになるとの見通しを示しました。
1月の発言から一転、フアン氏が見解を修正
フアン氏は2025年1月の段階で、「非常に有用な量子コンピュータの登場は15〜30年先」と述べ、これが量子関連銘柄の株価急落を招いていました。しかし今回、その見解を「誤っていた」と認め、具体的なタイムラインこそ明示しないものの、近い将来の実用化に期待を示しています。
Quantinuumとの提携で量子研究を加速
エヌビディアはすでに、ハネウェル傘下の量子コンピュータ企業Quantinuum(クァンティニューム)と提携し、量子研究センターの設立を進めています。自社GPUを活用した量子シミュレーション環境の整備にも注力しており、量子とAIの融合領域を見据えた布石が打たれています。
IBMやイオンキューも本格展開、業界全体が前進
量子コンピューティング分野では、他の主要企業も動きを強めています。インターナショナル・ビジネス・マシーンズ(IBM)は、「大規模かつフォールトトレラントな量子スーパーコンピュータ」の開発ロードマップを公表。イオンキュー(IONQ)は、英国のスタートアップ企業オックスフォード・アイオニクスを10億7500万ドルで買収すると発表しました。
米市場で量子関連株が急騰
こうした動きを受け、6月11日午前の米国市場では量子関連株が急騰しました。リゲッティ・コンピューティング(RGTI)は16%超の上昇、クオンタム・コンピューティング(QUBT)は27%以上の急騰を記録。イオンキュー(IONQ)も3%上昇し、ディーウェーブ・クオンタム(QBTS)は一時上昇後に0.3%の小幅下落となりました。
量子コンピューティング市場の転換点、投資家も注目
これまで「未来の技術」とされてきた量子コンピューティングが、いまや現実の課題解決に向けた実用段階に入りつつあります。フアン氏の発言は、その象徴的な一歩であり、投資家の注目を再びこの分野に集める可能性があります。
今後は、AIと量子コンピューティングの融合によって、これまでにない革新的なソリューションの創出が期待されます。引き続き、この分野の進展から目が離せません。