投資情報誌「バロンズ」は2025年6月11日、アルファベット(GOOGL)株がS&P500平均よりも割安に取引されている現状に対し、「バリュートラップのリスクがあるのではないか」との見方を紹介しました。この記事では、バロンズの報道内容を取り上げつつ、今後の投資判断に必要な視点を整理してみます。
S&P500を下回るバリュエーション
記事によると、アルファベット株は2025年に入ってから約6%下落し、予想PERは約19倍。これはS&P500の平均(22.5倍)を下回る水準であり、マグニフィセント・セブン(M7)の中でも最も低いバリュエーションとなっています。
さらに、FTSEラッセルによるインデックス再構成により、今月末にはアルファベットがラッセル1000バリュー指数で2番目に大きな構成比を占める見通しとなっており、バリュー株としての認識も高まりつつあります。
なぜ「割安」に見えるのか?その背景とリスク
一方で、この割安感が単なる市場の誤解によるものなのか、それとも構造的な問題を反映した「バリュートラップ」なのか、という点は慎重に見極める必要があります。
バロンズの記事では、以下のような懸念点が指摘されています:
- 検索市場でのシェア低下:ChatGPTやPerplexityといったAIツールにシェアを奪われつつある
- 米司法省の独禁法訴訟の影響:Chromeの売却やデータ共有の義務化といった対応が求められる可能性
- コングロマリット構造の限界:YouTubeやクラウド事業、ウェイモなど、成長性の高い部門も含めて、検索事業と同一視され、評価が抑えられている
これらの問題が放置された場合、株価の低迷が続くリスクは否定できません。
魅力的な事業群と潜在的な企業価値
とはいえ、アルファベットには成長余地のある事業が複数存在します。
- YouTube:世界最大の動画配信プラットフォームであり、Netflixを脅かす存在
- Google Cloud:クラウド市場でマイクロソフトAzureと競合
- ウェイモ:自動運転分野でのポテンシャルが高く、ウーバーやテスラのライバル候補
これらの事業が個別に上場していれば、より高い評価を受けるとの見方もあります。実際、D.A.ダビッドソンのアナリストは、アルファベットが事業分割を行えば、全体の企業価値は300ドルに到達すると分析しています。
*過去記事「アルファベットの企業価値を高める「分割論」:米Yahoo!ファイナンスが報じた注目の分析」
バフェット氏の失敗談と現在の評価
記事では、ウォーレン・バフェット氏がIBM投資で失敗した例を挙げつつ、アルファベットへの投資を逃したことも「大きな失策だった」と語った過去の発言も引用されています。
同氏が2018年に「現在の価格が妥当か判断できなかった」と述べていたように、今もなお、アルファベットの評価は簡単ではありません。
まとめ:再評価の鍵は事業構造の見直し
アルファベット株の割安感は確かに魅力的ですが、それが真の「投資機会」か、それとも成長鈍化を織り込んだ「正当な評価」なのかは、今後の企業戦略によって大きく変わってきます。
特に、YouTubeやクラウド、ウェイモといった事業をどのように展開していくか、グループ構造をどう見直すかが、投資家からの再評価の鍵となりそうです。