2025年6月、米国株式市場に再び熱気が戻ってきました。ステーブルコイン発行企業のサークル・インターネット・グループ(CRCL)と、人工知能クラウド企業のコアウィーブ(CRWV)のIPO成功が、新興企業への投資熱を呼び起こしています。
サークルとコアウィーブのIPOが市場の雰囲気を一変
6月5日に上場したサークルは、初日に株価が約170%も急騰し、翌日もさらに30%近く上昇しました。サークルは、米ドルと連動するステーブルコイン「USDC」の発行元として知られ、デジタル通貨の信頼性と普及に大きく貢献してきました。
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一方、AI分野で注目を集めるコアウィーブは3月下旬に上場。当初は株価が伸び悩み、売り出し株数の削減や価格レンジの引き下げを余儀なくされました。しかしその後、株価は急騰。IPO価格である40ドルから一時140ドル台まで上昇し、わずか数カ月で250%超の上昇率を記録しました。
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次の注目はチャイムとボイジャー・テクノロジーズのIPO
次にIPO市場の注目を集めているのが、フィンテック企業のチャイムと、宇宙・防衛技術に強みを持つボイジャー・テクノロジーズです。両社は6月9日の週に上場を予定しています。
チャイムは1株あたり24~26ドルで3,200万株を売却する予定で、ミッドポイントでは約8億ドルの資金を調達、企業評価額は100億ドルを超える見込みです。一方、ボイジャー・テクノロジーズは1,100万株を26~29ドルで売却予定で、約3億ドルの調達を見込み、評価額は約16億ドルとなります。
IPO熱再燃か?「FOMO」が市場を後押し
Mergermarketのエクイティ・キャピタル・マーケット部門責任者サミュエル・カー氏は、「コアウィーブの急騰を逃した投資家の間で、次の大型IPOを見逃したくないという“FOMO(Fear of Missing Out)”の心理が高まっている」と指摘しています。
同氏によれば、サークルやコアウィーブの成功が、これまで様子を見ていた未上場企業にもIPO申請の動きを促しているとのことです。「IPOのウィンドウが再び開きつつあり、市場の回復スピードは予想以上に早い」とも述べています。
夏の閑散期と通商リスクは懸念材料
ただし、IPOの勢いを鈍らせる可能性があるのが、夏場の閑散期です。多くの企業は、取引が低調になる時期を避ける傾向があります。それでも、秋以降に向けたIPO準備を進める企業は今後増加することが見込まれます。
さらに、ラッセル・インベストメンツのシニア投資ストラテジスト、ベイチェン・リン氏は、FRBが利下げに転じ、トランプ大統領が規制緩和を強化すれば、IPOやM&Aの動きが一段と活発化する可能性を指摘しています。
ただし、米中間の通商摩擦が再燃すれば、企業の意思決定を遅らせ、IPO市場の回復に冷や水を浴びせかねません。
ユニコーンの復活は本物か?注目はチャイムとボイジャー
チャイムやボイジャー・テクノロジーズのIPOが成功すれば、投資家心理はさらに好転し、IPO市場の回復に拍車がかかる可能性があります。ただし、本格的なブームの到来には、通商政策や金利動向といったマクロ経済の安定がカギとなります。
今、投資家に求められているのは「次のユニコーン」を見極める眼です。市場の期待と熱気が交錯する中、IPO市場は新たなフェーズに入りつつあります。