近年、成長株投資家は「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる巨大テック株に資金を集中させ、高いリターンを得てきました。しかし、今後10年から20年の視点で見たとき、同じ戦略が今後も通用するとは限りません。
アメリカの資産運用会社オールスプリング・グローバル・インベストメンツでグロース株チームを率いるマイク・スミス氏は、このような「安易な戦略」から脱却するタイミングに来ていると指摘しています。
投資判断の鍵は「3つのD」
スミス氏が重視するのは、債務(Debt)、人口動態(Demographics)、破壊的革新(Disruption)という3つの視点です。この考え方に基づき、同氏のファンドは小型株から大型株まで幅広い銘柄に分散投資しています。
マグニフィセント・セブン(アルファベット、アマゾン・ドット・コム、アップル、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ)にも一部投資をしていますが、S&P500指数と比べるとその比率は控えめです。
債務:財政赤字が成長を制限する時代に
米国では政府債務の増加が深刻な問題となっており、金利支払いが国防費を上回るという状況が生じています。今後は財政に関する政治的な決断が求められる場面も出てくるでしょう。
こうした中でスミス氏が注目するのが、クォンタ・サービシズ(PWR)です。電力インフラの構築を専門とする同社は、ユーティリティ企業ではないものの、公共インフラ整備には欠かせない存在です。270億ドル以上の受注残を抱えており、継続的な成長が期待されています。
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人口動態:高齢化がもたらすヘルスケア需要
米国ではベビーブーム世代の高齢化が進み、医療支出の増加が見込まれています。こうした環境の中、スミス氏が注目しているのがボストン・サイエンティフィック(BSX)です。
同社は加齢に伴う医療ニーズに対応する医療機器に特化しており、今後も安定的な成長が見込まれています。スミス氏は、同社が長期的に予測可能な成長トレンドの中心に位置していると評価しています。
破壊的革新:AIとサイバーセキュリティの交差点
人工知能の進化によって技術革新のスピードが加速しており、スミス氏はこうした環境下で「ピック&ショベル戦略」が有効だと述べています。これは、最終的な勝者が見えにくい分野において、基盤技術やインフラを提供する企業に投資するという考え方です。
具体例として挙げられるのが、サイバーアーク・ソフトウェア(CYBR)です。企業のセキュリティ対策は今や最優先事項となっており、AIの導入が進むほど守るべき範囲も広がります。
サイバーアークは、企業の社内システムへのアクセスを一元的に監視し、不審な動きを検知・遮断するツールを開発しており、多くの企業のセキュリティ責任者から高い評価を受けています。
成長株が見直されるマクロ環境
現在の米国経済は緩やかな成長にとどまっており、成長が限られた状況下では、持続的に成長できる企業に対して投資家がプレミアムを支払う傾向が強まっています。
スミス氏は、こうした低成長環境下では成長株への注目が再び高まると見ており、過去の成功体験にとらわれず、新たな成長企業を見出すことが今後の投資リターンの鍵になると語っています。