2025年、米国経済には不透明感が広がっています。トランプ大統領による関税政策が市場に影を落とし、インフレ懸念や高金利の長期化、さらには消費者需要の減退といった要素が、投資家心理を冷やしています。
こうした逆風下で、米金融大手シティグループのストラテジスト、スコット・クロナート氏は6月5日、経済環境に左右されにくい成長株のスクリーニング結果を発表しました。
マクロ経済の影響を受けにくい銘柄を厳選
今回のスクリーニングでは、経済指標が悪化しても株価が大きく下落しにくい銘柄が選ばれました。こうした企業は、マクロ経済の変動に対する相関が低く、市場の混乱時にも比較的安定したパフォーマンスが期待できます。
売上成長の持続性がカギ
選定された企業の共通点は、今後数年間にわたり安定した売上成長が見込まれていることです。特に、AI関連のハードウェア・ソフトウェア、デジタル決済、オンラインショッピングといった分野では、堅調な需要を背景に力強い成長が続いています。景気が減速しても、こうした分野は生活やビジネスの基盤としてのニーズが高く、売上の伸びが持続しやすいのです。
利益成長と効率的な経営も重視
シティの分析では、売上の伸びに加え、利益成長率の高さも重視されています。特に、営業レバレッジの高い企業は、売上が伸びるほど利益の拡大につながりやすく、効率的な運営によって高い投資リターンが期待できます。
割安感のあるバリュエーションも魅力
選定基準にはPEGレシオ(株価収益率 ÷ 利益成長率)が用いられており、今回選ばれた企業の多くは1.8倍未満という結果でした。これは、S&P500の大型テック株の平均PEGレシオである1.8倍を下回っており、将来の成長を過度に織り込んでいない「割安」な水準と評価されています。
シティが選んだ注目のグロース株
スクリーニングによって、以下の企業が有望銘柄として挙げられました。
- アマゾン・ドット・コム(AMZN)
- アルファベット(GOOGL)
- ウーバー・テクノロジーズ(UBER)
- ドアダッシュ(DASH)
- マスターカード(MA)
- ドラフトキングス(DKNG)
- アプライド・マテリアルズ(AMAT)
いずれもAIやデジタルサービス分野で高い成長性を持ち、利益体質も強固です。
中型株で注目のピンタレスト
中型株の中では、ピンタレスト(PINS)にも注目が集まっています。画像共有型SNSとして知られる同社は、広告在庫の拡大とユーザー数の成長を両立させつつ、AIを活用した広告最適化を進めています。
2026年までに売上は161億ドルに達する見通しで、年平均成長率は14〜16%に加速。今後3年間の年間利益成長率は24%とされており、効率的なコスト運用によって収益性も改善中です。
現在の株価収益率(P/E)は約18倍、PEGレシオは0.75倍と割安感があり、数千億ドル規模のデジタル広告市場を考慮すれば、成長余地は大きいといえます。
「守りながら攻める」戦略に最適な銘柄群
市場のボラティリティが高まる中、すべてのグロース株が安心材料とは言えません。しかし、シティが提示した基準を満たす企業群は、経済の逆風に強い構造的成長力と収益性を備えています。投資家にとっては、先行き不透明な時代における「守りながら攻める」戦略にぴったりの選択肢といえそうです。