クラウドストライクが第1四半期決算を発表、株価は時間外で下落

サイバーセキュリティ企業のクラウドストライク(CRWD)が6月3日、2025年第1四半期決算を発表しました。前年7月に発生したアップデートの不具合による大規模障害からの信頼回復が注目される中、決算内容はやや強弱混在となり、発表後の時間外取引で株価は6.7%下落しました。

EPSは予想を上回るも、売上とガイダンスは市場予想に届かず

調整後1株利益(EPS)は73セントと、ファクトセットのアナリスト予想66セントを上回りましたが、前年同期の93セントからは減少しました。売上高は前年同期比20%増の11億ドルでしたが、予想されていた11.1億ドルにはわずかに届きませんでした。

第2四半期の売上見通しは中央値で11.5億ドルとされ、市場予想の11.6億ドルを下回っています。通期の売上見通しは据え置かれ、市場は上方修正を期待していただけに、慎重な姿勢がややネガティブに受け止められました。

サブスクリプション収益とフリーキャッシュフローは好調

一方で、サブスクリプション事業の年間経常収益(ARR)は前年同期比22%増となり、市場予想を上回りました。フリーキャッシュフローも堅調で、同社の財務基盤の強さが再確認されました。

第1四半期末の現金保有額は39億ドルに達しており、同時に10億ドル規模の自社株買いプログラムも発表されました。

昨年のシステム障害の影響は限定的にとどまる

2024年7月19日に発生したシステム障害は、全世界で8.5百万台のWindows PCに影響を与えたとされ、IT業界史上最大規模の障害とされています。発生後の11営業日で株価は36%下落しましたが、2024年8月2日の安値を底に回復し、現在は障害発生前よりも43%高い水準で推移しています。

2025年度(1月期)には、この障害に伴う直接コストとして6,000万ドルを計上しましたが、そのうち3,900万ドルは保険金で補填されました。第1四半期には追加で4,000万ドルの関連コストを計上していますが、全体としては企業の成長に大きなブレーキをかけるには至りませんでした。

成熟フェーズへの移行と高いバリュエーション

クラウドストライクは現在、中期成長段階から後期成熟段階へと移行しつつあります。成長率は年々緩やかになっているものの、現金保有額は前年比25%増加しており、財務の安定性が増しています。

現在の株価は、今後12か月の予想売上に対して24倍と、クラウド系ソフトウェア企業の中でも最も高く評価されている水準にあります。参考までに、同社が第9位の構成銘柄となっている「iシェアーズ拡張テック・ソフトウェアETF(IGV)」は平均9倍となっています。

株主価値に向けた課題:希薄化とコスト構造

クラウドソフトウェア企業特有のビジネスモデルとして、売上成長には多額の営業費用、特に販売・マーケティング費が必要です。クラウドストライクも例外ではなく、第1四半期の営業費用の半分以上が販売関連に充てられています。

また、従業員報酬の一部を株式で支払う傾向が強く、今期の営業費用の約4分の1が株式報酬でした。これにより、発行済み株式数は年平均で3%のペースで増加しており、株主にとっては希薄化リスクが続いています。

今後は、自社株買いを通じた株主価値の維持がより重要な課題となりそうです。


このように、クラウドストライクは成長鈍化と高バリュエーションの狭間で、堅実な財務基盤を武器に次のフェーズへと移行しています。サイバーセキュリティ需要の高まりを背景に、今後の収益性と資本政策に引き続き注目が集まります。

*過去記事はこちら クラウドストライク CRWD

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