2025年5月の年次株主総会以降、バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の株価が下落を続けています。ウォーレン・バフェット氏が年内で最高経営責任者(CEO)を退任すると発表したことで、市場に不安が広がっているようです。
年初来の上昇を帳消しにする株価調整
バークシャー・ハサウェイのクラスA株は2025年6月3日に1.1%下落し、74万6,200ドルとなりました。クラスB株も1%下落して497.83ドルとなり、いずれも4月初旬以来の安値を記録しています。
株主総会の前日である5月2日にはクラスA株が過去最高の80万9,350ドルをつけましたが、それ以降は約8%の下落となっており、「バフェット・プレミアム」が剥がれているとの見方が強まっています。
UBS、2025年の業績見通しを引き下げ
UBSのアナリスト、ブライアン・メレディス氏は2025年のクラスB株1株あたり利益予想を6%引き下げ、19.92ドルとしました。アップル(AAPL)やバンク・オブ・アメリカ(BAC)の売却によって配当収入が減少する可能性があり、投資収益の鈍化が主な要因です。
さらに、年後半にはFRBによる利下げが見込まれており、現金保有による利息収入の減少も懸念されています。
自社株買いは当面見送りの可能性
メレディス氏は、現在の株価がバークシャーの「本質的価値」を上回っていると見ており、2025年と2026年に自社株買いは行われないと予測しています。実際、2024年5月から2025年4月までの1年間、同社は一度も自社株買いを実施していません。
財務の健全性と堅実な事業構成は依然強み
それでもメレディス氏は、バークシャー株に「買い」評価を維持。目標株価は606ドルから591ドルに引き下げましたが、現金および短期資産が約3,470億ドルあること、景気変動に左右されにくい事業構成、貿易摩擦の影響を受けにくい点などを評価しています。
特に注目されているのが自動車保険部門のガイコで、2025年に失ったシェアを回復する可能性があります。現在ガイコは、ステートファームとプログレッシブに次ぐ業界3位です。
バリュエーションは割高感が後退
バークシャー株は、5月初旬時点で簿価の1.8倍という水準まで買われていましたが、現在は1.6倍程度にまで低下しており、過去平均の1.5倍に接近しています。
2025年の予想利益ベースでのPERは約25倍とS&P500を上回っていますが、保有株の利益を反映した「ルックスルー利益」を考慮すれば、相対的に割安との見方もあります。
CEO交代による投資家心理の揺れ
市場では、バフェット氏の退任発表が投資家心理に影を落としているとの見方もあります。後継となるグレッグ・アベル氏が2026年にCEOに就任予定ですが、その手腕に対して投資家が慎重な姿勢を取っている可能性があります。
今後の動きと買い時の見極めが鍵に
バークシャーは現在、3,470億ドルという巨額の現金および短期投資資産を保有しており、それを活用した大型買収や新たな投資への期待が高まっています。しかし、第1四半期には保有株をネットで売却しており、目立った買収は行われていません。
今後、株価がさらに下落する場面があれば、バフェット氏が再び自社株買いに踏み切る可能性もあります。その動きは、2025年8月初旬に発表される第2四半期決算で明らかになると見られています。