2025年3月に上場したクラウドスタートアップのコアウィーブ(CRWV)の株価が急騰しています。その背景には、エヌビディア(NVDA)との緊密な関係や、ビッグテック企業からの旺盛な需要があると見られています。一方で、この関係について「極めて異例」と指摘するアナリストもいます。
仮想通貨マイニングから時価総額580億ドルのクラウド企業へ
コアウィーブは元々、アトランティック・クリプト・コーポレーションという仮想通貨マイニング企業でした。しかし現在では、エヌビディア製GPUを活用した高性能なデータセンターをレンタル提供するクラウド企業へと大きく舵を切り、時価総額はすでに580億ドルに迫っています。
エヌビディアとの「異例」な関係が注目の的に
2023年4月、コアウィーブはエヌビディアと3億2,000万ドル規模のインフラ契約を締結。同社が使用するGPUはすべてエヌビディア製であることが10-Qレポートから明らかになっています。また、エヌビディアはIPO時にコアウィーブ株の約6%を保有しており、2025年3月末時点ではその比率が7%にまで増加しています(SECへの13-G提出書類より)。
DAデビッドソンのテクノロジー調査部長ギル・ルリア氏は、「戦略的投資家として取引先がIPOに関与するのは非常に珍しい」とコメントしています。
苦戦したIPOとその後の急騰
コアウィーブは2025年3月28日に上場しましたが、当初予定していた4,900万株の売却は実現せず、実際には3,750万株にとどまりました。IPO価格は40ドル、初値は39ドルと低調なスタートでしたが、その後株価は急騰。6月2日時点では120ドルを超え、IPO価格の3倍に達しています。
顧客基盤の偏りがリスクに
現在、ハイパースケーラーと呼ばれるマイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOG)、アマゾン(AMZN)などは、自社開発のチップを進めながらも、依然としてエヌビディア製GPUに強く依存しています。一部報道では、アルファベットやマイクロソフトがコアウィーブのデータセンターをレンタルしていると伝えられています。
しかし、ルリア氏はこうした関係が「一時的なものである可能性がある」と警鐘を鳴らします。実際、2025年1月〜3月期の売上のうち72%がマイクロソフトによるものだったことが10-Qに記載されており、特定顧客への依存が明らかです。DAデビッドソンはこれをリスクと捉え、同社株を「アンダーパフォーム」と評価、目標株価を36ドルに設定しています。
成長の鍵は顧客の多様化
エヌビディアは、コアウィーブだけでなく、AIクラウド関連の新興企業であるラムダ、ネビウス・グループ(NBIS)、クルーソー・エナジーなどにも出資しており、AIインフラの拡充を狙っています。
コアウィーブが今後も市場から評価され続けるには、単にビッグテックとの取引に依存するのではなく、中小企業を含む多様な顧客を取り込み、安定したビジネスモデルを築けるかがカギとなります。
まとめ
コアウィーブの株価急騰は、エヌビディアとの強力な関係とAIインフラ需要の高まりに支えられたものです。しかしその裏には、特定顧客への依存やビジネスモデルの脆弱性といったリスクも存在します。今後、投資家が注視すべきは、顧客基盤の広がりと自立的な成長戦略の実現です。引き続き、同社の動向に注目が集まります。