アップル(AAPL)は、2025年6月9日に開催される年次開発者イベント「Worldwide Developers Conference(WWDC)」で「画期的なアップデート」を発表すると予告していますが、シティグループは最新レポートで「投資家の期待感は高まっていない」と指摘しました。
SiriのAIアップデートは延期、発表は見送りに
期待されていた音声アシスタント「Siri」への人工知能(AI)機能の大幅強化は、今回のWWDCで発表されない見通しです。アップルの経営陣は、このAIアップデートのリリース時期が未定であり、今後のOSアップデートサイクルに持ち越される可能性が高いと認めています。
2025年5月の投資家向け電話会議において、最高経営責任者(CEO)のティム・クック氏は、「当社の高い品質基準を満たすために、もう少し時間が必要だ」と説明しました。当初は2025年中の提供を見込んでいましたが、遅延が現実となったかたちです。
この延期が、WWDCを前にした投資家の低調な期待の一因となっていると、シティのアナリストは述べています。同社は今年3月の時点で、この開発遅延が通期のデバイス販売に悪影響を及ぼす可能性があると警告していました。
「パーソナルAIサーバー」の時代に向けて前進
それでもシティは、アップルがAI時代に対応した「パーソナルAIサーバー端末」の展開に本格的に参入する準備が整っていると評価しています。これは、AIモデルをクラウドではなく、直接デバイス上に組み込むという新たな潮流です。
アップルの強みとして、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを自社開発する「フルスタック戦略」が挙げられます。また、23.5億人規模のユーザーベースから得られる大量のデータも、ユーザー体験の最適化に大きく寄与すると見られています。
こうした強みを背景に、シティはアップル株に対して「買い」評価を継続し、目標株価を240ドルとしています。
注目は「Apple Intelligence」とUI刷新
WWDCでは、アップルのAI基盤「Apple Intelligence」に関する新たな発表が見込まれています。地域拡大やオープンAI以外のパートナー企業との協業が注目点です。
また、同イベントでは、iOSなどのOSに対する一新されたユーザーインターフェース(UI)の発表も期待されています。ビジョンプロのOSに近い「より統一され、シンプルなデザイン」が導入されると噂されています。
さらに、OSの名称を年号形式(例:iOS 26など)に変更する計画も一部で報じられており、ブランド戦略の見直しが進んでいる可能性もあります。
Siri刷新が見送られる中でも、こうした取り組みは、アップルが一貫性のあるエコシステムの構築を進めている証といえます。
市場の反応は限定的
2025年6月2日(月)午前、アップルの株価は前週と同じ200.9ドルで推移しています。市場はWWDCを控えつつも、現時点では目立った反応を見せていません。
*過去記事はこちら アップル AAPL