2025年5月30日、ペンシルベニア州で行われた集会において、トランプ大統領が米国の鉄鋼産業を支援するために、輸入鉄鋼への関税を現行の25%から50%へ引き上げると発表しました。この「関税サプライズ」を受けて、米国の鉄鋼関連株は週明け月曜日である6月2日の米国市場で急騰しました。
クリーブランド・クリフス株が28%高、他の鉄鋼株も続伸
米国の鉄鋼メーカー、クリーブランド・クリフス(CLF)の株価は、2日朝の取引で25%上昇し、7.28ドルを記録しました。スチール・ダイナミクス(STLD)とニューコア(NUE)の株価もそれぞれ約13%上昇し、市場全体の下落に逆行する形となりました。
過去1年で見ると、クリーブランド・クリフスの株価は66%下落しており、スチール・ダイナミクスは7%、ニューコアは34%のマイナスとなっていました。今回の急騰は、これまで売られていた鉄鋼株への回帰を意味するものとも受け取られています。
関税引き上げで国内価格上昇、鉄鋼各社の利益拡大に期待
関税が引き上げられると、海外からの輸入が減少するため、米国内での鉄鋼価格が上昇する傾向にあります。鉄鋼メーカーは価格が高くなることで利益が拡大しやすくなるため、株式市場ではポジティブな反応が広がっています。
現在の基準となる鉄鋼価格は、1トンあたり約875ドルとなっており、これはトランプ大統領が2018年2月に25%の関税を初めて導入する前の725ドルから上昇しています。
USスチール株は小動き、日本製鉄による買収が背景
一方、USスチール(X)の株価はほぼ横ばいで、0.2%安の53.74ドルでした。これは同社が日本製鉄による買収提案を受けており、買収価格が1株55ドルと提示されているため、株価の上昇余地が限定的な状況にあるためです。
トランプ大統領は、USスチールのモンバレー工場で開催された集会において、この買収を「画期的な合意」と称し、「この伝統あるアメリカ企業がアメリカ企業であり続けることを保証する」と強調しました。合意には、日本製鉄がアメリカ国内に140億ドルを投資し、施設の拡張や近代化を進める内容も含まれています。
JPモルガンは買収完了を前提に目標株価を引き上げ
JPモルガンのアナリスト、ビル・ピーターソン氏はこの発表後、「形式はともかく、これは実質的な買収だ」とし、USスチールの目標株価を39ドルから55ドルへと引き上げました。また、トランプ大統領が新たに発表した50%への関税引き上げについて「予想外だった」とコメントしています。
投資家は想定外の発表に反応、市場は関税ショックで鉄鋼株を再評価
今回の集会が開催されることは以前から予定されていましたが、新たな関税引き上げの発表については事前の予想がほとんどなく、鉄鋼関連株の反応は「驚き」をもって迎えられました。
米国が依然として鉄鋼の純輸入国であるという背景もあり、関税引き上げは国内メーカーにとって大きな追い風となります。今後も政治的な要因によって鉄鋼株が大きく変動する可能性があり、投資家にとって注目すべきセクターのひとつとなっています。