米国で2番目の規模を誇る公的年金基金であるカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)は、2025年第1四半期にいくつかの注目銘柄への投資を強化しました。特に、量子コンピューティング企業ディーウェーブ・クオンタム(QBTS)と、SNSプラットフォームを運営するトランプ・メディア&テクノロジー・グループ(DJT)に対する買い増しが注目されています。
ディーウェーブ・クオンタム株を大幅取得、業績好転への期待感
CalSTRSは、ディーウェーブ・クオンタムの株式を第1四半期に21万1672株追加取得し、期末時点で合計21万8931株を保有しています。
同社の株価は第1四半期に9.5%下落しましたが、第2四半期には115%急騰しており、株価のボラティリティの高さが際立ちます。2025年5月初旬、同社が発表した第1四半期の好調な売上により、株価が大きく上昇しました。CEOのアラン・バラッツ氏は「ディーウェーブの歴史上最も重要な四半期の一つ」とコメントしています。ただし、同社はまだ黒字化していません。
*過去記事「ディーウェーブ・クオンタム、過去最高の第1四半期売上を記録し株価高騰」
トランプ・メディア&テクノロジー・グループ株も追加購入、仮想通貨への転換に注目
トランプ・メディア&テクノロジー・グループはTruth Socialを運営する企業で、CalSTRSは同社の株式を2万1004株買い増し、3月末時点で9万5463株を保有する形となりました。
同社株は第1四半期に43%下落しましたが、第2四半期に入ってからは9.2%上昇しています。最近では25億ドルを調達してビットコインを購入する計画を発表し、ドナルド・トランプ大統領の家族の議決権が50%を下回る可能性があることも話題になっています。
インスタカートとCEO交代、CalSTRSは株式を追加購入
CalSTRSは食品配達サービスを展開するメープルベア(CART、ブランド名:インスタカート)の株式を4万1893株追加取得し、3月末時点で13万8456株を保有しています。
5月初旬、インスタカートのCEOであるフィジ・シモ氏がオープンAIのCEO職に就任するため退任することが明らかになりました。後任には最高事業責任者だったクリス・ロジャース氏が任命され、8月15日付で就任予定です。シモ氏は今後も取締役会の議長として移行を支援する予定です。
インスタカートの株価は第1四半期に3.7%下落しましたが、その後は14%上昇しています。
ユナイテッド航空株も大幅増加、業界再編にも注目
CalSTRSはユナイテッド航空(UAL)の株式を9万1626株買い増し、3月末時点で11万5788株を保有しています。
同社の株価は第1四半期に29%下落しましたが、第2四半期には15%上昇しています。CEOのスコット・カービー氏は最近、ニュージャージー州のニューアーク空港からの夏の航空券価格が大変お得であると述べています。また、ユナイテッド航空はジェットブルー航空との提携に合意し、ニューヨークのJFK空港での運航再開への道を開きました。
CalSTRSの投資スタンスと今後の見通し
CalSTRSは、SECに提出した四半期報告書(Form 13F)の中でこれらの株式取引を明らかにしました。同基金の運用資産は2025年4月末時点で約3,516億ドルに達しており、運用手法にはパッシブ運用とアクティブ運用の両方が含まれています。
CalSTRSは「ポートフォリオの保有銘柄は、インデックスやアクティブ比率の調整、あるいは合併や社名変更といった企業行動によって変動する」とコメントしており、今回の取引が必ずしも長期的な戦略の表れではない可能性もあります。
まとめ
ディーウェーブ・クオンタムやトランプ・メディア&テクノロジー・グループといったハイリスク・ハイリターン銘柄に加え、インスタカートやユナイテッド航空といった実需関連企業にも積極投資を進めるCalSTRSの動きは、2025年の投資トレンドを示す重要なシグナルといえます。今後の株価動向や企業戦略にも引き続き注目が集まります。
*過去記事「大手年金基金がポートフォリオを調整!今後の注目銘柄とは?」