2025年5月30日、エヌビディア(NVDA)の株価は前日比で約2.92%下落し、135.13ドルで取引を終えました。この下落の背景には、トランプ大統領が中国に対して「完全に合意を破った」と発言し、米中貿易摩擦の再燃懸念が高まったことがあります。
トランプ大統領の発言が市場に与えた影響
トランプ大統領はTruth Socialで、「悪いニュースだが、中国は予想通り、我々との合意を完全に破った」と投稿しました。この発言を受けて、テクノロジー関連銘柄中心のナスダック総合指数は0.3%下落し、S&P500は横ばいで終了しました。
さらに、ブルームバーグは同日、トランプ政権が中国のハイテク産業に対する貿易制限を拡大する準備を進めていると報じ、市場の不安を一層強めました。
一時的な関税緩和合意の崩壊懸念
米中両国は2025年5月中旬、スイスでの会談を経て、関税の一時的な緩和に合意していました。米国は対中関税を30%に、中国は対米関税を10%に引き下げると同時に、非関税措置の一部撤廃も発表されていました。
しかし、米財務長官スコット・ベッセント氏は29日、Fox Newsのインタビューで「協議はやや停滞している」と発言し、合意履行に懐疑的な見方が広がっていました。
エヌビディアの対中ビジネスに残る懸念
エヌビディアへの4月に発動された対中輸入関税による直接的な影響は限定的です。同社のAIチップは主に台湾で製造され、サーバーに組み込まれる工程はメキシコなどで行われています。しかし、別途導入された対中輸出規制により、2025年第1四半期には25億ドルの売上減となり、第2四半期にはさらに80億ドルの損失が見込まれると報告されました。
中国市場向けに設計されたH20チップなどの販売が制限されたことが、同社の売上に大きな影響を及ぼしています。
CEOの発言と市場の見方
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは「現時点では中国向けの新製品は計画していないが、将来的に政府と協議する可能性がある」と述べています。トランプ政権の規制が厳しい中、今後の戦略は慎重に進められる見通しです。
一方で、モルガン・スタンレーのアナリストであるジョセフ・ムーア氏は「中国市場の一部は回復する可能性がある」とし、長期的な展望には一定の楽観論も残されています。
決算は好調、市場全体では堅調な週に
エヌビディアは今週発表した決算で、アナリスト予想を上回る売上を報告しており、29日には株価が3%上昇しました。週全体で見ると、株価は3% 近い上昇を記録しています。中国関連の懸念はあるものの、AI需要の強さが同社を支えています。