2025年5月28日付のウォール・ストリート・ジャーナルが報じたところによると、エヌビディア(NVDA)が計画する中国・上海での新施設に対し、米国議会から新たな批判が寄せられています。問題視しているのは、共和党のジム・バンクス上院議員(インディアナ州)と民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)という、立場の異なる二人の議員による共同声明です。
「国家安全保障上の重大な懸念」
報道によれば、両議員はエヌビディアのジェンスン・フアンCEOに宛てた書簡の中で、この新施設が中国に最先端技術へのアクセスを提供する可能性があるとし、国家安全保障および経済安全保障上の重大な問題を提起しています。彼らは、施設の設立目的や計画内容、研究・開発の詳細、さらには中国政府からの優遇措置の有無などについて、詳細な説明を求めました。
エヌビディア側の説明と疑念
エヌビディア側は「この施設は既存社員のためのワークスペースにすぎず、業務の内容は従来と変わらない」と述べており、最先端のチップ設計などが持ち込まれることはないとしています。しかし、議員らはこの施設が中国のAI産業の発展を後押しする「抜け穴」になり得ると懸念しています。
超党派の懸念、背景に米中のAI競争
今回の問題が特に注目されるのは、保守派のバンクス議員と進歩派のウォーレン議員という、イデオロギーの異なる2人が共通の懸念を示した点にあります。米中間で激化するAI覇権争いにおいて、「中国に対する技術移転を阻止する」という姿勢は、現在のワシントンにおいて数少ない超党派的な合意のひとつです。
なお、エヌビディアは同日発表した2025年第1四半期決算で、前年同期比69%増の売上を報告しています。一方で、対中チップ輸出に関する規制強化の影響を受け、45億ドルの在庫評価損も計上しています。
今後の焦点:施設の運用と国際交渉
今後注目されるのは、エヌビディアがこの施設の開設を強行するのか、それとも議会や世論の圧力に屈して再検討するのかという点です。また、米国政府が他国との間でチップ輸出をめぐる新たなルールづくりを進めており、その行方も市場や安全保障政策に大きな影響を与えそうです。
このように、エヌビディアが米中間の緊張の渦中にある状況は続いており、同社の中国展開が今後どのように展開されるか、投資家・政策立案者双方にとって注視すべきテーマとなっています。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA