ナスダック総合指数は、トランプ大統領が「解放の日(Liberation Day)」関税を発表した2025年4月初旬の安値から26%上昇しています。輸入品の価格上昇が懸念され、消費と企業支出が減少する可能性がある中で、一部の関税が一時的に停止されたことが、株価回復の後押しとなりました。
この回復の波は、5月28日に発表されたエヌビディア(NVDA)の決算を受けてさらに加速しました。売上と利益のいずれもアナリスト予想を上回り、特にデータセンター向けチップの売上は前年同期比で73%増の390億ドル超となりました。生成AI分野への投資が引き続き拡大していることが背景にあります。
エヌビディアの株価は29日に3.25%上昇し、終値は139.19ドルでした。好調なチップ需要のサインとして、iシェアーズ・セミコンダクターETF(SOXX)も同日に0.41%上昇し、終値は209.09ドルとなりました。
AIソフトウェア銘柄にも波及効果
ソフトウェア関連株も反応しました。エヌビディアの好決算がAI関連ソフトウェアへの需要拡大を示したことで、マイクロソフト(MSFT)の株価は0.3%上昇し、終値は458.68ドルとなりました。
短期的には調整も見込まれますが、中長期的な視点を持つ投資家にとっては依然としてチャンスが広がっています。
テック株への資金流入は続く
エバコアが実施したポートフォリオマネージャー向け調査によると、回答者の35%以上が新たな投資先としてテクノロジー株を最も有望と見ています。2位の金融セクターは15%程度にとどまり、テクノロジー株への注目度の高さが際立っています。
また、バンク・オブ・アメリカのデータによれば、ファンドマネージャーは平均して総資産の約4.5%を現金で保有しています。これは過去最低水準の3%台より高く、テクノロジー株への買い余力が十分にあることを示しています。
一時的な調整局面でも下支えあり
ナスダック総合指数は現在19,000を超えて推移しており、2025年後半から売りが出やすい水準に近づいています。これは、セクター全体の将来の利益成長の一部がすでに株価に織り込まれているためです。
ただし、過去の動きを見ると18,000近辺では買いが入りやすく、今後も企業の利益成長が続くと投資家が判断すれば、下落局面でもすぐに買いが入ると予想されます。
セールスフォースの成長もAIが後押し
エヌビディアに加えて、セールスフォース(CRM)も好調な決算を発表しました。2026年度の売上予想を400億ドル引き上げ、中央値は410億ドル超となりました。これは前年比で8.5%の成長を意味します。
特に、人工知能関連の売上は前四半期比で2倍以上となっており、AIエージェントなどのソリューションが高単価で売れていることが背景です。企業はこのような製品を導入することで、他の運用コストを削減しています。
ただし、セールスフォースの株価は29日に3.3%下落し、終値は266.92ドルとなりました。
世界的なAI導入トレンドが追い風に
エバコアのストラテジストによると、現在AIを導入している大企業は世界全体で15%程度にとどまっていますが、スマートフォンやインターネットなど他の成長分野の導入スピードに照らせば、2026年には25%まで増加すると予測されています。
このような見通しが正しければ、今後もテクノロジー企業の売上と利益の拡大は続き、株価上昇の原動力になると考えられます。
まとめ:テクノロジー株はまだ買いのチャンス
短期的には市場の過熱感から調整が入る可能性はありますが、中長期的な成長ストーリーは健在です。エヌビディアやセールスフォースのように、AIを軸とした成長を実現している企業は今後も注目されそうです。現金を持つ機関投資家が買いに動く場面も多くなると予想され、テクノロジー株は引き続き投資妙味のある分野といえます。