2025年5月29日、エヌビディア(NVDA)の株価は決算発表を受けて急上昇し、一時的に時価総額で世界最大の企業となりました。最終的にはマイクロソフト(MSFT)にわずかに及ばなかったものの、時価総額は3.4兆ドルに到達しています。
この躍進の背景には、2025年4月期第1四半期決算が市場予想を上回る好内容だったこと、そして中国市場の喪失という逆風の中でも成長を維持していることがあります。
売上69%増、データセンター事業が成長を牽引
同四半期の売上は441億ドルで、前年同期比69%増という驚異的な成長を記録しました。とくにAIチップ需要の拡大が追い風となり、データセンター事業は前年比73%増の391億ドルと大きく伸びています。
一方、第2四半期の売上見通しは中央値で450億ドルとされ、市場予想の459億ドルをやや下回る内容となりました。これは、トランプ大統領による対中輸出規制によってH20チップの販売が禁止され、約105億ドルの売上減少が見込まれているためです。
ただし、この影響を除けば、同社の実質的な業績は大幅な上方修正に相当し、中国を除く市場での成長が非常に堅調であることが明らかとなりました。
ブラックウェルGPUの供給も順調に拡大
サプライチェーンにおいても明るいニュースが続いています。最高財務責任者のコレット・クレス氏は、最新のブラックウェルGPU「GB200 NVL72」搭載サーバーラックの生産が加速しており、主要クラウド事業者が毎週約1,000台を導入していると明かしました。
さらに、次世代モデル「ブラックウェル・ウルトラ(GB300 NVL72)」は5月に一部顧客向けにテスト出荷が始まり、今四半期中には本格的な出荷が開始される見込みです。
世界に広がる「ソブリンAI」の波
CEOのジェンスン・フアン氏は、AI導入は「まだ始まったばかり」と強調し、今後の成長の柱として「リースニング(推論)」「エージェント」「ソブリンAI」の3つを挙げました。
なかでも最新AIモデルに搭載されるリースニング機能は、従来モデルの100倍以上の計算能力を必要とするため、推論処理に対する需要は急速に高まっています。
また、各国政府や企業が独自にAIインフラを構築する「ソブリンAI」にも注目が集まっており、サウジアラビアとはAIサーバー1万8,000台の初期契約を締結。今後5年間で数十万台規模に拡大する可能性があります。UAEも2026年中に初のAIクラスターを稼働させる予定です。
株価とバリュエーション:依然として魅力的な水準
エヌビディアの株価は、貿易摩擦の影響で4月に記録した安値から約40%上昇し、年初来でもプラス4%と堅調に推移しています。直近の急騰を受けても、株価は12ヶ月先の予想利益に対してPER29倍と、過熱感は見られません。今後1年間で45%の売上成長が見込まれていることも、投資家にとって魅力的な要素です。
比較対象として、同じく時価総額上位のアップル(AAPL)は予想PERが28倍であるにもかかわらず、売上成長はわずか4%にとどまっており、エヌビディアの成長性とバリュエーションのバランスが際立っています。
「PC革命」や「iPhone誕生」に匹敵する成長ストーリー
AIという汎用技術があらゆる産業を変革する中で、エヌビディアはPC革命やiPhoneの登場に匹敵する「時代を動かす存在」として位置づけられています。現在はその序章にすぎず、今後数年間にわたって継続的な成長が期待されます。
市場の注目はますますエヌビディアに集まっており、次の四半期以降の動向からも目が離せません。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA