半導体メーカーのマーベル・テクノロジー(MRVL)が5月29日、2025年4月期の第1四半期決算を発表し、売上や利益が市場予想と一致する結果となりました。しかし、今回の決算以上に投資家の注目を集めているのが、アマゾンとの今後の関係性と成長戦略です。
売上は前年同期比63%増、データセンター向けが好調
マーベル・テクノロジーの売上は19億ドルで、前年同期比63%増加しました。これはファクトセット調べによる市場予想と一致しています。中でもデータセンター向けの売上は14億ドルとなり、こちらも予想通りの水準でした。
調整後1株利益は62セントとなり、アナリスト予想の61セントをわずかに上回りました。マーベルのCEOマット・マーフィー氏は、「第1四半期に過去最高の売上を記録し、第2四半期も引き続き力強い成長を見込んでいる」と述べています。
第2四半期ガイダンスは予想通り、AI需要が成長を後押し
マーベル・テクノロジーは第2四半期(7月期)の売上見通しを20億ドルと発表し、これは市場予想と一致しました。マーフィー氏は、「AI向け需要の高まりにより、当社のカスタムシリコンと光電子製品の出荷が急増している。当社はAIインフラ構築の中核に位置付けられており、特にカスタムシリコン事業が今後も強力な成長を牽引すると見ている」と語りました。
株価は時間外取引で下落、年初来で40%以上下落
しかし、決算発表後の時間外取引でマーベルの株価は3%以上下落しました。今年に入ってからの株価下落率は40%を超えており、投資家の不安感が続いています。
モルガン・スタンレーのアナリストは、マーベルが第1四半期中盤にガイダンス範囲を従来の±5%から±2%に引き下げたことを受け、見通しを下方修正していました。「Trainium関連の供給網や光学系の好調さ、従来型のネットワークやストレージ市場の回復期待がある中での引き下げはやや失望だった」と述べています。
アマゾンとの関係に注目、Trainiumチップの将来に不透明感
マーベルはアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と提携し、データセンター向けのカスタムAIチップ「Trainium」を提供しています。今回の決算発表では、このパートナーシップの将来性に関する情報開示が注目されました。
モルガン・スタンレーは、「Trainium 2の出荷は堅調であり、光学製品も強い」としたうえで、ASIC(アプリケーション固有集積回路)による売上は当面安定するとの見方を示しました。一方で、「チップの正式な発売が今年後半にもかかわらず、まだ議論されている点を見ると、この事業は質的に高いとは言えない」との懸念も表明しています。
台湾のAlchipとの競合やマイクロソフトのクセラレーターにも課題
今月初め、メリウス・リサーチはアマゾンとのTrainium 3およびTrainium 4の協業について、「2026年から2028年の成長見通しに不透明感をもたらしている」と指摘しました。アナリストは、「台湾のアルチップによるシェア奪取の懸念は依然として根強く、私の台湾訪問でもそれが確認された」と述べています。
さらに、マーベルがマイクロソフトと協業する新たなクセラレーター・プログラムについても、「未検証の事業であり、極めて高い実行力が求められる」との見方が出ています。
投資家は“確実性”を求めている
マーベル・テクノロジーはAIインフラ構築という成長分野において有利なポジションを確保しているものの、主要顧客との関係や競合の台頭といった不確実性が今後のリスクとして残っています。今回の決算で基本的な数字は堅調だった一方、将来に対する投資家の慎重な姿勢は変わっていないようです。
*過去記事はこちら マーベル・テクノロジー MRVL