2025年5月28日、アメリカ合衆国国際貿易裁判所が、ドナルド・トランプ大統領の大規模な関税措置を違法と判断した件について、その影響はさらに広がりを見せています。今回の記事では、控訴の動き、関連訴訟の拡大、政治的余波など、続報として新たに判明した事実をまとめます。
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控訴審と最高裁判断の可能性
米司法省は判決発表直後に、連邦巡回控訴裁判所への上訴を表明しました。これにより、関税差し止めの効力が一時的に解除される可能性もありますが、現段階では10日以内に判決を履行するよう求められており、関税徴収の停止が目前に迫っています。最終的な判断は、連邦最高裁判所で行われる公算が高まっています。
原告側の主張と判決理由
訴訟を起こしたのは、ニューヨーク州をはじめとする民主党主導の複数の州と中小企業です。彼らは、国際緊急経済権限法(IEEPA)の乱用により、議会が本来持つ課税権限が侵害されたと主張しました。特に、カナダやメキシコを対象とした麻薬対策名目の関税については、問題の本質と無関係な商品に課されていたことが指摘されました。
裁判所は「IEEPAが想定する国家的緊急事態の範囲を逸脱している」と判断し、略式判決(サマリー・ジャッジメント)を通じて原告側の完全勝訴を認めました。
政府の反応と政治的緊張
ホワイトハウス報道官のクシュ・デサイ氏は、「選挙で選ばれていない判事が国家緊急事態の対応を判断すべきではない」と裁判所の判断を批判しました。また、「アメリカの防衛産業や地域経済に深刻な損害を与えている貿易赤字は、緊急性を有する問題である」との主張を展開しました。
一方、民主党側のニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズ氏は、「これらの関税は事実上の大増税であり、消費者と労働者を苦しめた」と反論しています。
保守系団体も原告に参加
この訴訟には保守系の「リバティ・ジャスティス・センター」も参加し、中小企業の立場から「貿易赤字は緊急事態ではなく、IEEPAの対象ではない」と主張しました。政治信条を超えた訴訟連携は、トランプ政権の政策への幅広い異論の存在を浮き彫りにしています。
議会と政策立法への影響
今回の判決を受け、議会内で検討されていた「報復関税権限付与法案」の審議は事実上停滞しています。裁判所は「一部の関税が違法であるならば、同じ法的根拠に基づく関税はすべて違法である」と明言しており、限定的な救済措置ではなく、包括的な差し止めを命じました。
これにより、今後の関税関連立法にも慎重論が強まり、議会が通商権限を見直す動きが出てくる可能性もあります。
国際交渉と外交戦略への影響
すでに複数の国が、トランプ政権との通商交渉における立場を再検討しており、特に米中貿易交渉への影響は避けられません。IEEPAに基づく関税政策の正当性が崩れたことで、交渉力の低下が懸念されています。
また、今回の判決により、アメリカの大統領権限の限界に関する法的枠組みが国際的にも注目されており、今後の政権交代や外交政策に大きな影を落とす可能性があります。
関税訴訟の行方は世界の注目に
この関税に関する法的闘争は、単なる経済問題にとどまらず、大統領権限のあり方、三権分立、そして通商政策全体に関わる深刻な問題です。上訴審や最高裁での最終判断まで、世界各国がその行方を注視することになりそうです。