2025年に入ってからも米国株市場で注目を集めているパランティア・テクノロジーズ(PLTR)は、過去1年間で株価が約5倍に急騰し、時価総額で約2,500億ドルの上昇を記録しています。しかし、この驚異的な株価上昇が「リスク」になる可能性があると一部のアナリストが指摘しています。
S&P500入り後に急騰、しかし構造的リスクも浮上
パランティアは2024年9月23日にS&P500種株価指数(SPX)に正式に採用されました。採用発表時点での時価総額は約680億ドルでしたが、2025年第2四半期終了時には3,000億ドルに迫る勢いです。
この急成長に警鐘を鳴らしたのが、トライバリエート・リサーチを率いるアダム・パーカー氏です。同氏は、「6月末の指数リバランスが株価に大きな影響を与える可能性がある」と分析しています。
中型株指数から大型株指数へ移行、売り圧力の可能性
現在、パランティアは中型株指数の構成銘柄の中で8%という高いウェイトを占めています。これは、アクティブ運用ファンドにとって大きな負担となっており、6月末に予定されているS&P 500指数のリバランス後には大型株指数に組み入れられる可能性があります。
このタイミングで、アクティブマネージャーが保有株を売却する動きが出る一方で、大型株ファンドでは新たな銘柄として評価されることになります。ただし、その際に注目されるのが「バリュエーションの高さ」です。
売上対企業価値比率は過去25年で最も割高水準
トライバリエートは、将来の売上に対する現在の企業価値(EV)比率を分析し、パランティアの指標が「過去25年間で最も割高な部類に入る」と指摘しています。具体的には、EV/売上倍率が73倍とされており、これは今後10年間で年率40%以上の成長を続けることを市場が織り込んでいることを意味しますが、過去にこのような成長を達成した企業は存在しません。
2024年の売上は28億7,000万ドルで前年比29%の増加を記録しました。2025年には39億ドルの売上予想を発表しており、35%の成長が見込まれていますが、それでも現在の評価水準を正当化するには不十分だという見方もあります。
他銘柄と比較すると「割高」なのは明らか
パランティアより高い成長率を示すと予想される上場企業は80社存在しますが、そのすべてがパランティアよりも60%以上安いEV/売上倍率で取引されていると、トライバリエートは述べています。
「パランティアが本質的に優れた企業であることは否定しないが、今後の市場構造の変化により保有されにくくなるリスクがある」と同社は報告書でまとめています。
空売り筋にとっては“地獄”の銘柄
短期的な下落を狙う空売りも容易ではありません。ファクトセットのデータによれば、パランティアに対する空売り比率は2.63%と比較的低水準であり、ボラティリティの高さを示すベータ値は1.76となっています。
さらに、S3パートナーズの分析では、パランティア株のショートポジションは2025年5月21日時点で約30億ドルの損失を出しており、年初来で最も損失が大きいショート銘柄の一つに数えられています。
まとめ:期待先行の株価に注意が必要
パランティアはAI関連銘柄として高い注目を集めており、業績も着実に成長しています。しかし、現在の株価水準は過去の事例と比較しても極めて割高であり、指数再編やアクティブマネージャーの売却によって株価が下押しされるリスクがあります。
将来の成長性に自信がある投資家を除いては、6月30日を前に一度ポジションを見直すタイミングかもしれません。
*過去記事はこちら パランティア PLTR