核融合スタートアップであるオクロ(OKLO)の株価が過去1年で400%以上上昇し、投資家の間で注目を集めています。この驚異的な上昇の背景には、同社の独自戦略と米国政府の政策支援がありますが、その将来性については賛否が分かれています。
ウィリアム・ブレアが評価するオクロのビジネスモデル
オクロの戦略を高く評価しているのが、ウィリアム・ブレアのアナリストチームです。同社のドーシャイマー氏らが率いるチームは、5月28日にカバレッジを開始し、投資判断を「アウトパフォーム」としました。
注目すべきは、オクロが原子炉の設計を販売するのではなく、電力購入契約(PPA)を通じて、顧客に電力を長期的に供給するというビジネスモデルです。これにより、安定した継続収益が見込まれるだけでなく、原子力発電業界での差別化が可能になるとアナリストチームは指摘しています。
ハイパースケーラーとの契約で電力価格の上昇メリットを享受
同社はすでに、初の原子力発電所の着工前にも関わらず、複数の電力購入契約を締結しています。ウィリアム・ブレアは、近年ハイパースケーラー(大規模データセンター運営企業)との契約価格が大幅に上昇していることを挙げ、オクロがその恩恵を受ける立場にあると分析しています。
なお、オクロの第1号発電所の稼働は2027年末から2028年初頭を予定しており、実際の売電開始は2028年以降になる見込みです。
規制緩和の恩恵と今後の展望
オクロは現在、米原子力規制委員会(NRC)から建設運転一括認可(COL)の取得を目指しており、このアプローチが承認プロセスの迅速化に寄与する可能性があります。トランプ大統領による一連の規制緩和措置は、こうした進行を後押しする形となっています。
ウィリアム・ブレアは、こうした政策変更が「サイエンスと実行に関するリスクを抱える」先進的原子炉分野において、オクロの優位性を一層高める要因であると述べています。
核融合ルネサンスにおけるオクロの役割
米国政府は、2050年までに国内の原子力発電能力を現在の4倍となる400ギガワットまで引き上げる目標を掲げており、小型モジュール炉(SMR)を核とした“核融合ルネサンス”の到来が期待されています。オクロは、この新時代をけん引する中核的企業と目されています。
同社CEOのジェイコブ・デウィット氏は、バロンズのインタビューで、「政府からの補助金に依存するビジネスモデルではなく、展開スピードの加速と燃料供給の自由化、サプライチェーンの再構築が重要」と語っています。
投資家の警戒感と今後の課題
一方で、シーバート・ウィリアムズ・シャンクのアナリストらは、政策発表直後の株価上昇について「過熱気味」との見方を示しています。新たな原子炉技術の導入が行政命令で想定されているほど迅速には進まない可能性があり、経済的なメリットが表れるには時間がかかるという指摘もあります。
また、原子力安全審査の過去の事例では、承認に10年以上を要したケースもあり、現在の人員削減の流れがプロセスのさらなる遅れを招く可能性があるとしています。
まとめ:オクロは長期的視点で注目の銘柄
短期的にはリスクも伴うものの、長期的に見ればオクロは先進的なビジネスモデルと政策追い風を背景に、原子力業界の成長をけん引する存在となる可能性があります。成長余地と市場での独自性を考慮すれば、エネルギーインフラ投資の中でも注目すべき銘柄のひとつとなっています。
*過去記事「オクロ株が431%上昇!核エネルギー新時代の幕開け」