2025年5月28日、半導体大手のエヌビディア(NVDA)が2025年4月期第1四半期の決算を発表しました。売上・利益ともに市場予想を上回る結果となりましたが、中国向けのH20チップ規制による影響が今後の業績に大きな懸念を与えています。
売上は前年比69%増、EPSも予想超え
エヌビディアの第1四半期の売上は441億ドルとなり、前年同期比で69%の増加となりました。市場予想の433億ドルを大きく上回る好結果です。調整後1株当たり利益(EPS)は0.81ドルで、こちらもアナリスト予想の0.73ドルを上回りました。
なお、H20チップの在庫評価損による45億ドルの特別損失を除いた場合、EPSは0.96ドルに相当すると同社は説明しています。
データセンター事業が好調、売上の中核に
エヌビディアのAIデータセンター向けチップの需要は引き続き旺盛で、第1四半期のデータセンター関連売上は391億ドルと、前年同期比で73%増となりました。この売上のうち、およそ50%は大手クラウドサービスプロバイダーによるものです。
生成AIやAIエージェントの導入拡大が背景にあり、CEOのジェンスン・フアン氏は「AI推論によるトークン生成は1年で10倍に急増しており、AIコンピューティング需要は加速している」とコメントしています。
第2四半期の見通しは市場予想に届かず
一方で、第2四半期の売上見通しは中間値で450億ドルとされ、アナリスト予想の459億ドルを下回りました。その背景には、トランプ大統領による対中半導体輸出規制の影響が色濃く出ています。
エヌビディアは、第1四半期にH20チップの輸出規制によって25億ドルの売上を失ったと説明しており、第2四半期には更に80億ドルの影響が見込まれるとしています。これにより、2四半期合計での影響額は105億ドルに達するとしています。
ブラックウェル・ウルトラ・サーバーを今期中に出荷へ
エヌビディアは、次世代AIサーバー「Blackwell Ultra GB300 NVL72」の出荷も発表しました。一部顧客へのテスト出荷を完了しており、2025年第2四半期中には量産出荷を開始するとしています。現行モデルのGB200 NVL72に比べて、性能が50%向上しているとされます。
この新型サーバーは、AIインフラ需要の拡大に対応する切り札と位置付けられており、今後の成長ドライバーとして注目されています。
株価は好決算を受けて一時上昇も、先行き懸念で軟調に
決算発表直後、エヌビディアの株価は一時5%以上上昇しましたが、市場の期待を下回る第2四半期見通しや中国向け売上の急減が意識されて下落に転じ、上昇幅を縮めており、140ドル近辺で取引されています。
過去1カ月で同社株は24%上昇しており、年初来では0.39%のプラスとなっています。ただし、1月6日に記録した過去最高値149.43ドルからは10%近く下落した水準にあります。
まとめ:エヌビディアの今後は規制と製品展開がカギ
今回の決算は、エヌビディアの強固なデータセンター事業とAI市場における優位性を再確認させるものでした。一方で、対中輸出規制による売上減少は深刻であり、次期製品のブラックウェル・シリーズの普及スピードが今後の成長の鍵を握るといえます。
市場の期待に応える持続的な成長を示せるかどうか、今後の決算や製品発表に注目が集まります。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA