半導体大手エヌビディア(NVDA)が2025年4月期第1四半期決算を発表し、市場の注目を集めました。米国政府による中国向けチップ輸出規制の影響が懸念される中でも、堅調な業績が示されたことで、発表後の時間外取引では株価が4%以上上昇しました。
売上は前年比69%増、予想を上回る好結果
エヌビディアの第1四半期売上は440.6億ドルとなり、前年同期比で69%の大幅増加となりました。ファクトセットの集計によると、アナリスト予想の443.4億ドルをわずかに上回る水準です。この好調な業績は、同社の最新AIチップ「ブラックウェル」の販売拡大や、AI関連需要の継続的な伸びによるものです。
中国への輸出制限が与える影響と対応
決算発表にあたって、アナリストや投資家の最大の関心は、中国市場へのH20チップ輸出が規制された点にありました。すでに規制対応済みのH20に対しても、新たな規制がかかり、現時点では輸出が完全に停止している状況です。加えて、ホッパー製品ラインに対するさらなる調整も認められていないため、技術的にも解決策が見いだせていません。
その結果、同社は第1四半期に45億ドルの在庫評価損を計上し、25億ドルの売上を失いました。さらに、第2四半期には最大で80億ドルの売上損失が見込まれています。特に、中国におけるAIアクセラレータ市場の規模が500億ドルにのぼるとされており、この市場を失うことは大きな痛手です。
ガイダンスは保守的だが、実質的には強気
それでも、エヌビディアは第2四半期の売上見通しを450億ドル(±2%)と発表しました。これはアナリスト予想の459億ドルを下回っていますが、80億ドルの売上喪失を考慮すると、実質的には市場期待を上回る強気な数字と見ることができます。
メリウス・リサーチのアナリスト、ベン・ライツェス氏も、今回のガイダンスは中国以外の市場での堅調な成長を示しており、全体としては予想を上回る内容だと評価しています。
AI需要の拡大が逆風を相殺
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、AI関連の需要拡大が中国市場の逆風をある程度相殺していると述べました。特に以下の4点がポジティブサプライズとして挙げられています。
- 推論型AIの発展(問題解決や論理的思考を行うAIモデル)
- AI拡散規制の撤回(中国以外への輸出制限案が取り下げられた)
- エンタープライズ向けAIエージェントの需要拡大
- 工場にAIを導入する「AIファクトリー」の普及拡大
フアン氏は、世界中の新設工場にAIが組み込まれていく過程で、同社が中核的な役割を果たすと見ています。
実質粗利益率71.3%、収益性は健全
第1四半期の調整後粗利益率は61%でしたが、H20チップに関する在庫評価損を除けば71.3%に達しており、アナリストの予想に一致する水準です。この数値は、事業の根幹が健全であることを示しています。
グローバル・インベスメンツのポートフォリオマネージャーであるトーマス・マーティン氏も、事業の強さを評価しつつ、「中国での逆風がある中でこれだけの数値を出せるのは驚異的だ」とコメントしています。
株価バリュエーションは健全な水準にシフト
現在、エヌビディアのフォワードP/E(株価収益率)は28.3倍と、過去5年平均の40倍を下回る水準まで低下しています。これは、過去2年間の異常な成長率から、今後は持続可能な成長ペースに移行するという市場の期待を反映しています。
実際、同社は2024年度に126%、2025年度に114%の売上成長を記録しましたが、今後は2026年度に53%、2027年度に24%と、成長率の鈍化が予想されています。
それでも投資家は、将来のAI分野におけるサプライズや可能性を評価しており、株価は依然として高い関心を集めています。マーティン氏も、「今後どの水準に落ち着くかは不透明だが、少なくとも投資家は成長余地を信じている」と話しています。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA