2025年5月27日、米国のクラウドCRM大手であるセールスフォース(CRM)は、データ管理ソリューションを提供するインフォマティカ(INFA)を約80億ドルで買収することを正式に発表しました。この取引は、セールスフォースが2021年にスラックを買収して以来最大規模のM&Aとなります。本買収は、AIエージェントと呼ばれる自律型AIエージェントの開発を加速させ、企業のデータ活用能力を飛躍的に高めることを目的としています。
買収の概要と条件
セールスフォースは、インフォマティカの全発行済み株式を1株あたり25ドルの現金で取得する予定です。これは、買収報道前の株価に対して約30%のプレミアムとなります。取引完了は、セールスフォースの2027会計年度初頭(2026年2月以降)を予定しています。
AIエージェント戦略の強化
セールスフォースは、インフォマティカの高度なデータ統合、メタデータ管理、マスターデータ管理(MDM)などの機能を、自社の「Agentforce」プラットフォームに統合することで、AIエージェントがより信頼性の高い判断を下せるようにすることを目指しています。これにより、企業は部門間で分断されたデータを統合し、AIによる自律的な意思決定を可能にする基盤を構築できます。
市場と投資家の反応
買収報道後の27日の米国市場でインフォマティカの株価は5.9%の上昇を記録しています(米国東部夏時間11:50現在)。一方、セールスフォースの株価は一時的に4%近く下落しましたが、その後回復基調にあります。一部の投資家は過去の大型買収に対する懸念を示していますが、今回の取引はデータクラウド分野の成長戦略と合致しており、長期的には評価される可能性があります。
今後の展望と戦略的意義
セールスフォースのマーク・ベニオフCEOは、「今回の買収により、業界で最も完全なAIエージェント対応のデータプラットフォームを構築する」と述べています。インフォマティカのアミット・ワリアCEOも、「セールスフォースとの統合は、データとAIの力を最大限に引き出すための重要な一歩である」とコメントしています。
この買収により、セールスフォースはデータクラウド、MuleSoft、Tableauなどの既存プラットフォームとインフォマティカの技術を統合し、企業向けAIの中核基盤を強化することが期待されます。特に、データの信頼性と透明性が求められる金融、医療、製造業などの分野での活用が進むと見られます。
今後、規制当局による審査や統合プロセスの進展が注目されますが、AIとデータ管理の融合による新たな価値創出が期待される取引と言えます。