日本製鉄によるUSスチールへの出資枠組み、米国政府の管理下で合意か?

  • 2025年5月28日
  • 2025年5月28日
  • BS余話

2025年5月27日、米ペンシルベニア州選出の上院議員デイビッド・マコーミック氏は、米ニュース番組「CNBC」のインタビューにて、日本製鉄(5401)によるUSスチール(X)への約149億ドルの出資に関する新たな枠組みについて言及しました。この新枠組みは、米国政府の管理下で実施されるもので、CEOは米国人とし、取締役会の過半数も米国人で構成される予定です。さらに、米政府が重要な経営判断に対して拒否権を持つ「ゴールデンシェア」を導入するという内容です。

米国政府の監督体制と国家安全保障協定

マコーミック議員によれば、日本製鉄はUSスチールに対して約140億ドルの出資を行い、米国政府と「国家安全保障協定」を締結する予定です。この協定により、米政府は特定の取締役の任命に関する承認権を持つほか、生産レベルの維持など、重要な経営事項への影響力を確保します。これは、国家安全保障上の懸念から買収案が一度阻止されたことを受けて提示された枠組みであり、トランプ大統領も「米国が支配権を持つ」と強調しています。

日本製鉄の投資と雇用維持への取り組み

日本製鉄は、USスチールの本拠地であるピッツバーグ地域の施設群、特に19世紀に建設されたエドガー・トムソン製鉄所に24億ドルを投資し、新たに電気アーク炉の建設を計画しています。日本製鉄は、買収によるレイオフや工場閉鎖は行わないことを明言しており、USスチールの貿易問題に関しても、米国の利益を守る方針を示しています。また、同社はこの提携を通じて、米国市場へのアクセス拡大と保護主義的な米国の関税政策の恩恵を期待しています。

労働組合と政治的反発

USスチールの取締役会および株主は日本製鉄の提案を承認しましたが、全米鉄鋼労働組合(USW)はこれに強く反対しています。バイデン前大統領は国家安全保障上の理由からこの取引を阻止しましたが、トランプ大統領の就任により状況は変化し、現在は対米外国投資委員会(CFIUS)による再審査が進められています。USWは、USスチールは国家の重要産業であり、日本製鉄は長年にわたり米国の貿易法に違反してきたと主張し、懸念を示し続けています。

世界の鉄鋼業界に与える影響

2023年における世界の鉄鋼生産量は約20億トンで、そのうち約54%を中国が占めており、中国の支配力が際立っています。日本製鉄は世界第4位、USスチールは第24位の鉄鋼メーカーであり、両社の統合により、世界第3位の鉄鋼企業が誕生することになります。この提携は、業界再編の大きな節目となる可能性を秘めています。

今後の展望と注目点

今回の新たな枠組みは、日本製鉄が当初提案していた完全買収ではなく、米国政府の監督下で進められる「パートナーシップ」形式となります。トランプ大統領はこの枠組みについて、米国の利益に適うものであり、日本製鉄にとっても戦略的意義があると述べています。しかし、労働組合や一部の政治家からは依然として批判があり、今後の政府審査や最終合意の動向が注目されます。

*過去記事「トランプ大統領が後押し!日本製鉄とUSスチールの歴史的パートナーシップ

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