米国制裁の中で加速する中国AI開発―バロンズが報じた最新事情

米国の著名な投資情報誌「バロンズ」は2025年5月27日、中国の人工知能(AI)業界に関する詳細なレポートを公開しました。この記事では、中国発のスタートアップ「ディープシーク」が開発したAIモデル「R1」の登場を契機に、国内の大手テクノロジー企業や有力スタートアップがAI市場で激しい競争を繰り広げている様子が紹介されています。

アリババ、テンセント、バイドゥの戦略

バロンズによると、アリババ(BABA)は今後3年間で3,800億元をクラウドおよびAI分野に投資する計画です。AIアシスタント「Qwen」は、すでに月間アクティブユーザー数が1億4,900万人に達しています。一方、テンセントはWeChatへのAI統合を進めるとともに、ゲーム生成モデルの開発にも注力しています。

検索エンジン最大手のバイドゥ(BIDU)は、AIチャットボット「Ernie」を展開していますが、ユーザー数の面ではアリババやテンセントに後れを取っていると報じられました。

注目を集める新興企業

スタートアップの中では、清華大学の研究室から2019年にスピンオフした智譜AI(Zhipu)が注目を集めています。同社はテンセントやアリババからの支援を受け、ディープシークの「R1」と同等の性能を1/30のコストで実現するAI推論モデルを発表しました。

現在、智譜AIは新規株式公開(IPO)を目指しており、2025年5月時点での評価額は30億ドルに達しています。ただし、同社は2025年1月に米国の輸出ブラックリストに指定されています。

智譜AIは、中国メディアで「AIタイガース」と称される有力スタートアップグループの一角であり、MiniMax、百川AI、Moonshot、01.AIなどもこのグループに含まれます。アリババはこれら全ての企業に出資しており、テンセントも一部に投資しています。

投資家にとっての魅力とリスク

バロンズは、中国AI企業のバリュエーションが米国企業と比べて割安である点を投資家にとっての魅力として挙げています。その一方で、半導体チップの供給制限や地政学的リスク、米国市場での上場廃止といった課題も指摘されています。

特に、エヌビディア製チップへの依存や、ファーウェイ製品の高い電力消費など、技術的なボトルネックが懸念されています。さらに、米中間の貿易摩擦の激化により、中国企業のADR(米国預託証券)が上場廃止となるリスクも高まっています。米国の投資家は中国企業のADRに約8,000億ドルを投資しており、仮に上場廃止となれば、大規模な売却が発生する可能性があります。

まとめ

今回のバロンズの分析は、中国AI市場の急成長と、その背後にある政治的・技術的リスクの両面に光を当てた貴重なレポートです。投資家は、中国企業の成長ポテンシャルを見極めつつ、不透明な外部環境に対する十分なリスク管理が求められます。

最新情報をチェックしよう!
>

幸せな生活作りのための米国株投資。
老後資産形成のための試行錯誤の日々を報告していきます。
皆様の参考になれば幸いです。

CTR IMG