米国の半導体企業ナビタス・セミコンダクター(NVTS)の株価が5月22日の米国市場で急騰、午後1時過ぎの時点で154%上昇し、4.8ドルあまりで取引されています。これは、同社がエヌビディア(NVDA)との戦略的パートナーシップを発表したことによるものです。この提携により、ナビタスはエヌビディアの次世代800V高電圧直流(HVDC)アーキテクチャの開発に参画し、同社のGPUを駆動する「Kyber」ラックスケールシステムを支援することとなります。
ナビタスの技術とエヌビディアの次世代データセンター構想
ナビタスは、ガリウムナイトライド(GaN)およびシリコンカーバイド(SiC)技術を活用した次世代パワー半導体の専門企業であり、GaNFastおよびGeneSiCブランドで製品を展開しています。これらの技術は、従来のシリコンベースの半導体に比べて高速スイッチング、高効率、小型化を実現し、AIデータセンター、電気自動車、再生可能エネルギーシステムなどの高性能コンピューティング環境に最適です。
エヌビディアの800V HVDCアーキテクチャは、従来の54Vインラック電力分配システムの限界を克服し、1メガワット(MW)以上の電力を各ラックに供給することを目指しています。この新しいアーキテクチャにより、銅の使用量を最大45%削減し、電力効率を最大5%向上させ、メンテナンスコストを最大70%削減することが可能となります。ナビタスのGaNSafeパワーICとGeneSiC SiC MOSFETは、この高効率な電力供給インフラの中核を担います。
株式市場の反応と投資家への影響
ナビタスの株価は、エヌビディアとの提携発表後、時間外取引で大きく上昇し、最大224%増の6.19ドルを記録しました。この急騰は、同社の技術が次世代AIデータセンターの電力供給において重要な役割を果たすことへの期待を反映しています。一方で、ナビタスは2024年に8,330万ドルの売上高に対して8,460万ドルの純損失を計上しており、収益化には課題も残っています。
エヌビディアとの提携は、ナビタスの技術力と市場での地位を強化する可能性がありますが、投資家は短期的な株価の変動に注意し、長期的な視点での成長性を見極めることが重要です。特に、エヌビディアが2027年から800V HVDCアーキテクチャの本格導入を予定していることから、ナビタスの収益への具体的な貢献は中長期的な視点で評価する必要があります。
今後の展望と投資戦略
ナビタスのエヌビディアとの提携は、同社の技術が次世代AIデータセンターの電力供給において重要な役割を果たすことを示しています。しかし、収益化までの道のりや競合他社との競争など、依然として課題も存在します。投資家は、短期的な株価の変動に惑わされず、ナビタスの技術開発や市場展開の進捗を注視し、長期的な成長性を見極めることが求められます。
エヌビディアとの提携により、ナビタスはAIデータセンター市場でのプレゼンスを強化し、将来的な収益拡大が期待されます。しかし、投資判断においては、同社の財務状況、技術開発の進捗、競合環境などを総合的に評価することが重要です。