米国の半導体メーカー、ウルフスピード(WOLF)の株価が5月21日の米国市場で急落し、前日比69%減の0.97ドルを記録しました。同社が数週間以内に連邦破産法第11章(チャプター11)の適用を申請する準備を進めていると報じられたことが背景にあります。この報道を受けて、投資家の間で不安が広がり、株価は一時、1ドルを下回る水準まで下落しました。
ウルフスピードの財務状況と破産申請の背景
ウルフスピードは、炭化ケイ素(SiC)を用いた半導体製品の製造を手掛けており、電気自動車や再生可能エネルギー分野での需要拡大を背景に成長を遂げてきました。しかし、3月31日時点で約65億ドルの負債を抱え、現金および短期投資は約13億ドルにとどまっています。特に、2026年5月に満期を迎える5億7,500万ドルの転換社債の返済が大きな課題となっており、これまでに複数の債権者からの債務再編提案を拒否してきました。
同社は、2024年10月にアポロ・グローバル・マネジメント主導の投資グループから7億5,000万ドルの資金調達を行い、さらに2022年のCHIPS法に基づく最大7億5,000万ドルの政府支援を受ける可能性がありました。しかし、これらの支援を受けるためには、2026年、2028年、2029年に満期を迎える転換社債の再資金調達が必要であり、現時点ではその見通しが立っていません。
株式市場での反応と投資家への影響
ウルフスピードの株式は、2025年に入ってから既に85%以上下落しており、現在では米国上場企業の中で最も空売り比率が高い銘柄となっています。このような状況下での破産申請の報道は、さらなる株価下落を招き、投資家の信頼を大きく損なう結果となりました。
また、同社の主要顧客である日本の半導体メーカー、ルネサスエレクトロニクスも影響を受けており、2023年7月に締結した10年間の長期供給契約や20億ドルの前払金の行方が注目されています。
今後の展望と投資家へのアドバイス
ウルフスピードの破産申請が現実となった場合、同社の再建計画や債務再編の進捗が注目されます。特に、主要債権者であるアポロ・グローバル・マネジメントがどのような対応を取るかが、再建の成否を左右する可能性があります。
投資家にとっては、同社の財務状況や再建計画の詳細を注視しつつ、リスク管理を徹底することが求められます。また、炭化ケイ素市場全体の動向や競合他社の動きにも注意を払い、ポートフォリオの見直しを検討することが重要です。
今後の展開次第では、ウルフスピードの再建が成功し、株価が回復する可能性も否定できませんが、現時点では慎重な対応が求められます。